昭和、平成、そして令和。
もし元号が変わっていなかったら、いまは昭和94年。
そう、ぼくたちの暮らしは、
わずか100年弱でここまでSF映画のような世界へと変化したわけです。
平成に入り、世の中のあらゆるものがデジタル化し、
物事のスピード感がグンッとアップ。
物事を時短でこなせるようになったのはいいことですが、
その浮いた時間で休息を取らず、
さらに仕事をしてはストレスを溜め込んでしまう、典型的な悪循環。
みんなが心に余裕がない時代というのも、ちょっと悲しいですよねぇ。
でも日本には「温故知新」という美しい言葉があります。
"ふるきをたずねて新しきを知る"
過去のさまざまな知識や見解を積極的にインプットし、
独自のライフスタイルを築くって、素敵な行為だなと思います。
そこで今回は、
昭和初期の暮らしを丁寧かつ正確に描いたアニメーション
『この世界の片隅に』をご紹介したいと思います。
きっと、さまざまな意味で学びがあるはず。
こんな内容です。
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すずは、広島市江波で生まれた絵が得意な少女。
昭和19(1944)年、20キロ離れた町・呉に嫁ぎ
18歳で一家の主婦となったすずは、あらゆるものが欠乏していく中で、
日々の食卓を作り出すために工夫を凝らす。
だが、戦争は進み、日本海軍の根拠地だった呉は、
何度もの空襲に襲われる。
庭先から毎日眺めていた軍艦たちが炎を上げ、市街が灰燼に帰してゆく。
すずが大事に思っていた身近なものが奪われてゆく。
それでもなお、毎日を築くすずの営みは終わらない。
そして、昭和20(1945)年の夏がやってきた―
***
戦争映画というのは、基本的に人気のないジャンルです。
できることなら目を背けたいという気持ちもわかります。
それでもなお、この映画をオススメしたいのは、
戦時下で貧しいながらもライフスタイルが魅力的だから。
中でも注目は食事シーンで、
ここはアニメ史上に残る屈指の名シーンだと思います。
のんが声優を務める主人公すずは、配給がだんだん乏しくなって、
食卓が寂しいものになるにも関わらず、
路傍に生えてるスミレや、はこべら、スギナ、
たんぽぽなどの食べられる野草を集めて4人分の料理を作ります。
お金はないけど、知恵を使って家族のお腹を満たそうとする。
さらに、イワシの干物、卯の花、お芋、小麦粉、梅干しの種なども使い、
計5品ほどの料理を作る。
この一連の展開をまるで料理番組かのように丁寧に観せてくれるのです。
そのアイデアと手際の良さに、ほぉぉー!となること間違いなし。
しかもね、ここ一番大事なのですが、とにかく楽しそうなんですね。
やらされていない。だからこそ、アイデアが生まれるのだと思います。
(即席モンペの作り方も必見!)
ごく普通の暮らしの中にある大切なもの。
祖父母世代の丁寧な暮らしを追体験することで、
あなたのライフスタイルを再考してみるなんて、
いかがでしょうか?
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『この世界の片隅に』
DVD 3,800円(税抜)
Blu-ray 4,800円(税抜)
発売中
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
© こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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