キノ・イグルーの週末シネマ​ no.244
インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌|まどろむキミがかわいい猫との暮らのカバー画像

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌|まどろむキミがかわいい猫との暮らし

文:キノ・イグルー 有坂塁

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌|脚本・監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン(2013年・アメリカ)

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2022年02月18日作成



それは先日、実家に帰ったときのこと。

1歳になる娘が"動物好き"という

嬉しくてたまらない事実が発覚しました。


これまでもTVを見ているときに、

双子のパンダや、温泉に入るカピバラを見ては、

「あ!」って指を差し、反応自体はしていたのですが、

動物に直接触れ合うことで、

彼女の動物好きという想いを完全に理解することができました。


奥さんの実家にいる2匹の犬と対面したときは、

ワンワン吠えられながらも、一切気にする素振りを見せず、

ヨタヨタ歩いていって、いいこいいこをしてました。


ぼく側の実家には、猫が2匹います。

1匹は、プライド高めで毛並みの美しいクール猫。

人生で初めて猫と遭遇した娘は、

犬と同様のアプローチで近寄るものの、

一線を超えたこところで、高速猫パンチ!

そりゃ、そうなります。

でも爪を立てていないので痛みはゼロで、

むしろその素早い動きに大喜び。

さらにちょっかいをかけるのです。


もう一匹は、生粋の受け入れ体質。

猫なりのさりげない優しさと距離感で娘を見守ってくれています。

強めにポンポン叩かれたとて、少しも怒りません。

そこで思いました。

ここでもし「シャーー!」なんて噛み付いたりでもしようものなら、

娘はネコ恐怖症になるかもしれない。

動物自体、苦手になってしまうかもしれない。

そう思うと、この子がぎゅーっと愛おしく感じてくるのです。


人間とは違う意志を持って、

暮らしに"やわらかさ"を与えてくれる猫の存在は、やっぱり特別。


今回ご紹介する映画も、

猫がいるいないで作品自体の印象が大きく変わるものを

あえて選んでみました。


コーエン兄弟が監督を務めた、

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』。

名前からして、シブそうでしょ?笑


まずは、内容からご確認ください。


***


1961年、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ。

頑固なフォーク・シンガー、ルーウィン・デイヴィスは、

知人の家を転々とするその日暮らしの日々を送っていた。

そんなある日、泊めてもらった家の飼い猫が逃げ出してしまい、

成り行きから猫を抱えたまま行動するハメに。

おまけに、手を出した友人の彼女からは妊娠したと責められる始末。

たまらず、ギターと猫を抱えて

ニューヨークから逃げ出すルーウィンだったが…


***


はい。

こちらは、ボブ・ディランが憧れたフォーク・ミュージシャンの

デイヴ・ヴァン・ロンクの回想録をベースにした物語となっています。

そう、タイトルだけじゃなく、内容も鬼シブなわけです(笑)

おまけに映像は、モノクロ。


でも逆に言うと、

男メインの硬派な世界に自由気ままな猫がいる方が、

かわいらしさはより際立ってきます。

ファンシー過ぎる世界とキュートな猫の掛け合わせは、ちょっと胃もたれするみたいな。

甘いケーキにはブラックコーヒーが合うみたいな(別の話か)


まあ、とにかく。

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス〜』という映画に、

もし猫がいなかったら、

ここまで魅力ある作品にならなかったことは間違いないでしょう。


《自由気ままな猫と、夢を追いかけるアーティスト》

茶トラ猫の存在が、映画に"やわらかさ"を与えると同時に、

夢を追うアーティストの苦悩と葛藤を浮き彫りにするという

"奥行き"をも与えてくれています。

思い通りにいかないミュージシャンと、

自由気ままに家を出入りする猫、その対比によって。


この直線的ではない描き方、またはバランス感覚のようなものが、

"コメディ色の強いスリラー映画"、

もしくは"スリラー色の強いコメディ映画"を作ってきた

コーエン兄弟らしさだと思うのです。


そんな本作は、第66回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを獲得し、

イギリス「ガーディアン紙」2014年映画ベスト10の第4位にも選出されるなど、

各方面で高い評価を受けることとなりました。

個人的にも、ここ10年のコーエン兄弟の中では、

迷わずベストと言い切れる1本です。


ひざに抱かれてリラックスする姿や、軽やかに家から飛び出す様など、

心癒される猫との暮らしもたくさん楽しめますし、

何といっても、作り手の猫への愛情が嬉しくなる一作であるのです。


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「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」
Blu-ray&DVD 発売中
Blu-ray:5,170 円(税抜価格 4,700 円)
DVD:4,180 円(税抜価格 3,800 円)
発売・販売元:東宝
©2012 Long Strange Trip LLC

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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