背中で語ると言ったら、この人しかしません!
ハリウッドの生ける伝説、クリント・イーストウッド。
生涯現役。生涯映画人。
1930年生まれの91歳。
彼のキャリアは、1950年代のTVドラマ『ローハイド』と、
1960年代のイタリア製西部劇"マカロニ・ウエスタン"という
西部劇俳優として幕を開けます。
それ以降は俳優兼監督として年に1本のペースで映画を作り続け、
関わった作品は、総数で60作以上!
1971年の『ダーティーハリー』の世界的なヒットにより、
ハリウッドスターとしての地位を築き、
のちに映画史に残る名監督としての名声まで得てしまう。
まるで大谷翔平のような二刀流で、
唯一無二の映画人生を歩み続けている現役のレジェンドなのです
(じつはジャン=リュック・ゴダール監督も同い年)
そんなイーストウッドが、
『グラン・トリノ』をもって俳優業を引退すると聞いたときは正直驚きましたし、
覚悟を持って鑑賞せねばと襟を正しました。
結果的に撤回することにはなったのですが、
それでも彼自身が一度は俳優業の"最後"と位置づけた作品であることに変わりはありません。
いったい、どんな役どころだったのか。
ストーリーと合わせてご確認ください。
***
妻に先立たれ、一人暮らしの老人ウォルト・コワルスキー。
人に心を許さず、無礼な若者たちを罵り、
自宅の芝生に一歩でも侵入されれば、ライフルを突きつける。
そんな彼に、息子たちも寄り付こうとしない。
学校にも行かず、仕事もなく、自分の進むべき道が分からない少年タオ。
彼には手本となる父親がいない。
二人は隣同士だが、挨拶を交わすことすらなかった。
ある日、ウォルトが何より大切にしているヴィンテージ・カー<グラン・トリノ>を、
タオが盗もうとするまでは――。
ウォルトがタオの謝罪を受け入れたときから、二人の不思議な関係が始まる。
ウォルトから与えられる労働で、男としての自信を得るタオ。
タオを一人前にする目標に喜びを見出すウォルト。
しかし、タオは愚かな争いから、家族と共に命の危険にさらされる。
彼の未来を守るため、最後にウォルトがつけた決着とは――?
***
彼が演じる役どころは、言葉は悪いですが、頑固ジジイです。
頑固なおじいちゃんなんてかわいいものではなく、頑固な老人では品が良すぎる。
絶対近くにはいてもらいたくないタイプの、
無骨で、気難しく、人を寄せ付けないオーラを纏った頑固ジジイなのです。
その雰囲気は、映画が始まってからの数分で、じわーっと伝わってくると思います。
自分の世界に閉じこもり、何もかもを否定するその姿からは、
共感できるポイントは見つからず、清々しいまでに意固地。
はっきり言って、本当に嫌なヤツです(すみません)
「こんな主人公で大丈夫?」というのが、最初の印象でした。
でもだからこそ…
それ以降の展開に、僕たちは心をギュッと鷲掴みにされ、
人によっては嗚咽してしまうほどに感動してしまうのだと思います。
詳しいことは言えませんが、
彼が最後に下した決断は、普通に考えれば出来るわけがないでしょうし、
すごく嘘っぽいとも感じてしまう。
それでも、あれほどまでに心を奪われるのは、
クリント・イーストウッドの生き様が
ウォルトという役柄からにみ出ているとしか言いようがありません。
肉体が放つ説得力。
つまり、背中がすべてを物語っているわけです。
この役を演じられるのは自分しかいないと判断した、監督のイーストウッド。
その役を持って一度は引退を決意した、俳優のイーストウッド。
そんな一世一代の役柄であるウォルト・コワルスキーから、
ぜひ彼の覚悟を感じ取っていただければと思います。
クリント・イーストウッドが尊敬してやまない
ポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ監督は、
105歳まで映画を作り続けました。
※最新作『クライ・マッチョ (原題) 』は、2021年9月からアメリカで公開予定。
もちろん監督・主演です!(日本公開は未定)
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『グラン・トリノ』
Blu-ray 2,619円(税込)
DVD 1,572円(税込)
デジタル配信中
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
©2009 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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