キノ・イグルーの週末シネマ​ no.42
四月物語|サクラサク日本の花を愛でのカバー画像

四月物語|サクラサク日本の花を愛でる

文:キノ・イグルー 有坂塁

四月物語|監督:岩井俊二(1998年・日本)

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2018年04月06日作成



2018年3月31日、

桜舞い散る井の頭公園のベンチで、この原稿を書いています。


目の前には、たくさんのお花見客が。

おおきな犬を連れた家族は、トトロの曲を歌いながらドーナツを食べています。

そのとなりには『七人の侍』ならぬ真っ赤な顔をした7人のおじさんが、

開幕したばかりのプロ野球順位予想をしています。

その奥には、30人近くいそうな学生の集団が。

ボーッと眺めているだけで、涙がこぼれそうになる愛おしい風景。


そんな桜の季節になると毎年思い出すのが、

岩井俊二監督の映画『四月物語』です。


***


4月、桜の季節。

北海道から上京した卯月は、東京・武蔵野の大学に通うため、

慣れない土地で独り暮らしを始める。

おとなしい性格の彼女は、変わった性格の友人やアパートの隣人など、

個性の強い人々と触れ合っていく。

だが、そんな卯月も大学の志望動機を聞かれた時だけは、

思わず言いよどんでしまう。

実は、卯月には人に言えない理由があったのだった…


***


桜のシーンは、映画がはじまってすぐ。

雨のようにふりそそぐ桜吹雪のなかを歩く、白無垢の花嫁。

引っ越し作業をしている窓の外には、はらはらとしとやかに舞う桜吹雪。

こんな素敵な桜のシーンがオープニングにあることで、

映画全編を桜がつつんでくれている印象になります。

新しいアパート、新しい学校、新しい自転車、

そして桜の花びらが舞う、新しい風景。

春という季節への期待や不安を一編の詩のように描いた、

ぜひこの季節に観ていただきたい1本です。


井の頭公園も、すっかり日が落ちて、肌寒くなってきましたので、

この辺りで筆を置きたいと思います。

みなさま、素敵な春を。


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『四月物語』
Blu-ray 3,800円(税別)
発売・販売元:ノーマンズ・ノーズ
(C)1998 ROCKWELL EYES INC.

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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