キノ・イグルーの週末シネマ​ no.262
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ドリーム|目指したいのはこんな魅力的な女性

文:キノ・イグルー 有坂塁

ドリーム|監督:セオドア・メルフィ(2016年・アメリカ)

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2022年06月24日作成



ここ数年、目に見えて"女性映画"が増えています。

そのきっかけは、はっきりとあって、

2017年にハリウッドから始まった「#MeToo」運動以後。

ここから急角度で右肩上がり、急増しているイメージです。


主演を張るのは、

これまでのような型にハマっていない、イキイキとした女性たち。

決断力や行動力が伴っていて、共感性の高いキャラクター。

でも、必ずしも好ましい女性ばかりではないところに、

環境の"豊かさ"を感じるようになってきました。


多面的なキャラクターが増えてきたのは、

作り手に女性が増えたことも要因かもしれません。

その象徴とも言えるのが、『ノマドランド』のオスカー受賞。

メインとなる作品賞だけじゃなく、

クロエ・ジャオ監督は女性として史上2人目、

アジア系女性としては初となる監督賞を受賞。

加えて、"女性ノマド"という新しい生き方を体現したフランシス・マクドーマンドも

2度目となる主演女優賞を獲得。

この事実は、今後"女性映画"のマーケットを急成長させていくこととなるでしょう。


他にも、

ジェニファー・ロペス主演の女性4人による犯罪映画『ハスラーズ』や、

シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーという

豪華三大女優の共演作『スキャンダル』など、

シスターフッド(女性の連帯)を描いた作品も、幅広いバリエーションで増産中。


そんな充実した"女性映画"の中から今回選んだ1本は、

ノンフィクション小説を映画化した『ドリーム』です。

先に挙げた3作品もそうなのですが、

"現代"を描く物語の多いこのジャンルの中で、

本作は1960年代の女性たちを描きつつ、

多くの現代女性からも支持される稀有な一作となっています。


まずは、その内容からご確認ください。


***


1961年、アメリカはソ連との熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた。

NASAのラングレー研究所には、

ロケットの打ち上げに欠かせない"計算"を行う

優秀な黒人女性たちのグループがあった。

そのひとり、天才的な数学者キャサリンは

宇宙特別研究本部のメンバーに配属されるが、

そこは白人男性ばかりの職場で劣悪な環境だった。

仲の良い同僚で、管理職への昇進を願うドロシー、

エンジニアを目指すメアリーも、

理不尽な障害にキャリアアップを阻まれていた。

それでも仕事と家庭を両立させ夢を追い続けた3人は、

国家的な一大プロジェクトに貢献するため

自らの手で新たな扉を開いていくのだった…


***


1960年代のアメリカは、まだ州によっては黒人差別のための法律が残っていた。

その中で、国の威信をかけたビッグプロジェクトに

NASAの黒人女性たちが携わっていた…

そんな嘘のような実話が、実際に存在していたんですね。


でもこのハリウッドが喜びそうなエピソードが、

なぜ60年近く映画化されてこなかったのか。

調べてみると、じつはこの原作本が発表されるまで、

アメリカ人もこの3人のことはほとんど知らなかったのだそう。


まあ確かに、これまで映画の主役になれるのは、

宇宙飛行士などもっとわかりやすい人たちでしたよね。

それを影で支える人たちは、あくまでサブキャラクターでしかなかった。


でも時代の潮流が変わり、

それこそ日本でいえば「プロジェクトX」のような番組もでき、

ようやく彼女たちのような人にも日の目が当たる時がきた。

みんなそれぞれを認め合おう、という素敵な時代に。

ということで、本作の原題は『Hidden Figures(隠れた人々)』なんですよね。

何と粋なタイトル!


キャサリン、ドロシー、メアリーの3人は、

"黒人"であり、"女性"であることから、二重の差別を受けながらも、

前例がないという固定観念を打ち破り、道を切り開いていきます。

苦労しながらも仲間と支え合い、

タスクをこなしていく姿には感銘を受けるでしょうし、

めちゃくちゃ、やる気が漲ってくると思います!


全米では『ラ・ラ・ランド』を超える特大ヒットを記録。

これは、"知られざる黒人の歴史"を描きつつも、

焦点を"3人の女性のキャリアと生活"に当てたことで、

多くの現代人が共感できる作品に仕上げたことが大きかったのだろうと思います。

職場での男性からのいやがらせとか、家庭との両立の難しさは、

現在進行形で当てはまるような問題ですからね。


そんな、実話に基づく感動のサクセス・ストーリー。

ぜひ、たくさんの刺激を受けちゃってください!


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『ドリーム』
ディズニープラスのスターで配信中
© 2022 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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