突然ですが、イギリスの女優エミリー・ワトソン主演の
『エミリー』という映画はご存知でしょうか?
「知ってるよ!」というあなたは、相当な事情通。
というのも、じつはこちら、存在しない作品です。
正確には『アメリ』の構想当初に
監督のジャン=ピエール・ジュネが、
エミリー・ワトソンを念頭に書きあげた脚本で、
そのタイトルが『エミリー』でした。
しかし彼女が急きょ降板してしまい、
そこへ彗星のように現れたのがオドレイ・トトゥ。
彼女は千載一遇のチャンスをものにし、
一躍スターダムへのし上がっていったのだそうです。
もしも『エミリー』のままだったら…
おそらく主人公はよりエキセントリックで、
ここまでポップな作品にはならなかったのでは?
なんてことを、つい想像してしまいます。
(だってワトソンは、あの『奇跡の海』の主人公なのですから)
そして完成した『アメリ』は、こんな内容となりました。
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想像力は豊かだが、周囲とのコミュニケーションが苦手な少女アメリ。
22歳になった今では、モンマルトルのカフェで働いているが、
周りの人々を観察しては想像力を膨らませて
空想にふける毎日を送っている。
だがアメリはあることをきっかけに、
彼女なりの奇抜な方法で人を幸せにすることに喜びを見出していく。
そんなある日、不思議な青年ニノに出会った彼女は
たちまち恋に落ちてしまう。
彼の気を惹こうとするアメリは一計を案じるのだが…
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本作の魅力は、とにもかくにも、アメリです。
大げさではなく、美術、衣装、音楽などのすべては、
彼女の個性を表現するために存在している、
と言っても過言ではないほどに。
中でも印象的なのが、彼女のお部屋で、
空想好きな女の子のマイワールドと言った、
見事な仕上がりとなっています。
色は、赤で統一。
壁紙も赤、カーテンも赤。
一見、派手になりそうですが、暗めのトーンを選択し、
アクセントに金色や、緑を加えることで、
上品で、アンティーク調な仕上がりとなっています。
そこにミヒャエル・ゾーヴァの絵を額装するところがまた、
アメリらしいセンスです。
現実と空想が入り混じった不思議な世界感は、まさに彼女そのもの。
グッドチョイスです。
他にも、ランプやシャンデリアなど、小道具はかわいいものばかり。
なんでもこれらは、
モンマルトルにある「ロブジェ・キ・パルル」という
ブロカントで揃えたのだそう。
"おしゃべりするオブジェ"という店名も
アメリの世界観にぴったりで素敵です。
この週末は、ぜひ部屋ごもりして
『アメリ』の世界観にじっくり浸ってみてはいかがでしょうか?
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『アメリ』
Blu-ray 2,381円(税別)
発売中
発売元:ニューセレクト/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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