雨が、物語を動かす。
ロマンティックに雨を降らす。
ウディ・アレンほど、雨を効果的に使える監督っていないのではないでしょうか。彼の映画では、事態が大きく変わろうとする重要なシーンで雨が降ります。
たとえば、『マッチポイント』。
主人公の男性は、屋敷を飛び出したスカーレット・ヨハンソン演じるノラを全速力で追いかけ、どしゃ降りの中、彼女を抱きしめます。
しかしその情事のあと、彼女は消息不明となり、運命の歯車は男性を狂わせていきます。
『ミッドナイト・イン・パリ』の場合、
「パリは雨のときが一番美しい」というストレートなセリフがあるのですが、じつはこれ、あの晴れやかなラストシーンへの伏線でもあるのです。
さすが、アカデミー脚本賞受賞作。
実際にウディは、こんなコメントも残しています。
「雨を降らせるのが僕は好きなんだ。 すごく美しいと思う。 もちろん雨の場面を撮影するのは大変だし、面倒だよ。 それでも雨降りの雰囲気を映画に入れたいんだ。」
そんな彼の作品中、とりわけ『マンハッタン』の雨の使い方は、
そのさりげなさも含め、個人的に大好きだったりします。
主人公のふたりがセントラルパークを散歩中、激しい雷雨に襲われます。
とても外にはいられないという状況で彼らが逃げ込んだのが、
プラネタリウムなんですね。これがうまい。
まるで、宇宙に迷い込んだかのような、ロマンティックなシチュエーション。
さらに"ここにいるしかない"という状況が、ふたりの心を徐々に近づけ、
伝説となっているNYの夜の散歩シーンへとつながっていくわけです。
ウディにとって “雨” は、欠かすことのできない最高の小道具のひとつ。
もしまだ彼の観てない方は、雨降りの季節にぜひ。
梅雨にウディ・アレンを見るなんて、とっても素敵な映画体験になること間違いなしです。
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『マンハッタン』
Blu-ray 1,905円+税
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
(C)2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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