キノ・イグルーの週末シネマ​ no.76
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50/50 フィフティ・フィフティ|たった一言が想いを変えることだまの力

文:キノ・イグルー 有坂塁

50/50 フィフティ・フィフティ|監督:ジョナサン・レヴィン(2011年・アメリカ)

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2018年11月30日作成



「映画は好きだけど、自分なんかに何ができるだろう?」


20代の半ばごろ、ぼくは悩んでいました。

キノ・イグルーをはじめる3年ほど前、

ビデオレンタル店でアルバイトをしていた頃のことです。


そんなときに、ふと、知り合いの編集者の方から言われた何気ないひと言で、

心がふわっと軽くなったのです。


"有坂くんと話すと、すごい映画が観たくなるんだよね"


なんか泣きそうになりました。

一見、何でもないような言葉ですが、

具体的な解決案ばかり考えていたぼくには、目から鱗のひと言。

映画好きな自分を全肯定してもらったような感覚になり、

視野がぐーーんと広がったことを覚えています。


"ことだま"の力に魅了されたぼくはその後、

本や映画の中に出てくる気になる言葉をメモするようになり、

インスタで「#キノイグルーのだれかのことば」として、

ときどき発信していたりします。


今回はその中から、ひとつお届け。

ジョセフ・ゴードン=レヴィットが主演した

難病エンターテイメント『50/50 フィフティ・フィフティ』から、

とっておきのひと言をご紹介したいと思います。


***


酒もたばこもやらない"普通"の青年アダムに突然告げられた病気は"ガン"だった。

27歳という若さで、5年生存率50%のまさかの余命宣告。

その日から、アダムの生活環境は一変。

よそよそしい会社の同僚たち、看病の重圧に負けそうな恋人、

同居を迫る世話焼きの母親…

病気のアダムに気遣って誰も今までどおりに接してくれない。

ただ一人女好きの親友カイルをのぞいては。

カイルと一緒に病気を"ネタ"にナンパしたり、

新米セラピストのキャサリンと手探りのカウンセリングを通して、

"ガン"の日々を笑い飛ばそうとするアダム。

しかし刻一刻と進行する病魔に、

やがてアダムは平穏を装うことができなくなる…


***


本作の中に出てくる名言は、

セス・ローゲン演じるカイルが、アダムにかけたこんなひと言。


「オマエは死なない。フィフティ・フィフティだ。カジノならバカ勝ちだぞ」


何の根拠もない、いい加減すぎる言葉。

けど、当事者にとっては胸が震えるほどに嬉しいひと言だったりします。


つまり"ことだま"とは、言葉だけでなく、

どのタイミングで、誰が言うかも大事だし、

なにより相手を想う心が何よりも大切だと思うのです。


しかも本作の場合、脚本を担当したウィル・ライザーは、

自身もがんを克服した経験を持っていて、セス・ローゲンは彼の大親友。


ということはあのセリフってもしかして、

セスがウィルに実際に言った言葉なんじゃないか!

そんなことを考えてしまうわけです。

そう思うと、なんかグッときますよね。


しかもセスは今回出演だけでなく、製作も務めるほどの熱の入れようなので、

ほんとにそうなのかも!


真偽はさておき、

本作にはそんな男同士の友情という一本の芯がしっかり通っているので、

満足してもらえること間違いなし。

ぜひみなさんもセスの声をとおして、

彼の"ことだま"を確認してみてくださいね。


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『50/50 フィフティ・フィフティ』
DVD 3,800円(税抜)
Blu-ray 4,700円(税抜)
DVD&Blu-ray発売中
発売元:アスミック・エース
販売元:ハピネット
(C)2011 IWC Productions,LLC.All Rights Reserved.

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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