2020年が幕を開けました!
みなさま、あけましておめでとうございます。
「キノ・イグルーの週末シネマ」、本年も心をこめて一語一句綴っていきたいと思います。
変わらぬご愛顧、どうぞよろしくお願いします。
さて早速ですが、新年最初の映画をご紹介しようと思います。
一年のはじまりは、やっぱり明るく楽しく過ごしたい!
ということで、とっておきのフランス映画をご用意しました。
巨匠ジャン・ルノワール監督作の『フレンチ・カンカン』。
パリの観光スポットとしておなじみ"ムーランルージュ"。
その創設者たちの伝記からインスピレーションを得たというルノワール後期の傑作は、
個人的に生涯ベスト映画の1本でもあります。
年明けのおめでたいタイミングでみなさんにご紹介できることが、
いまから嬉しくてたまりません!
ストーリーは、ざっとこんな感じになります。
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1888年のパリ。
上流階級向けのバーを経営するダングラールは、
ある日、モンマルトルのキャバレーで見初めた踊り子ニニのカンカン踊りに触発される。
彼は早速その店を買い取り、"ムーラン・ルージュ"と改名。
カンカンのショーをメインとした娯楽の殿堂にしようとする。
だが、店の元スターであるローラとニニが反発を繰り返し、
それに伴うトラブル続きで開店計画がなかなか順調に進まずにいたのだが…
***
さて、この映画の良さをひとつずつ語っていきますね。
まずひとつ目は、おおらかに描かれる人間たち。
これはルノワール映画全般の特徴でもあるのですが、とにかくみんな懐が深い!
特にコンプライアンスなどにガチガチに縛られているぼくらから見ると、
「やっぱりこれぐらいがいいよなー」と大事な何かを再確認できるはず。
ふたつ目は、美しい色彩です。
ロートレックやドガ、
そして父であるオーギュスト・ルノワールの絵画へのオマージュが散りばめられた映像は、
画面から幸福感が溢れ出てしまうほどに色彩豊か。
観ているだけでうっとりです。
そして最大の見どころは、伝説のラストシーン。
ムーランルージュがいよいよ開幕し、歌あり踊りありのショーが次々展開されていくのですが、
なんとここだけで20分近くもの時間を使います。
中でもタイトルにもなっているフレンチ・カンカンを延々と踊るシーンは、
踊り子たちのはじけるような笑顔と、観客の熱狂的なリアクション、
そして"圧巻"としか形容できないパフォーマンスに心が震えるはず。
ここまで感動できるのは、全体の構成の素晴らしさもあると思います。
前半の80分近くは、昔の映画らしい"型にはまった演技"がつづき、
そこから一気に解き放たれたかのようにエネルギーが爆発!
役者たちの踊っているときの表情は、もはや演技を超えて"生きるよろこび"そのもの。
本作を観るたびに、ぼくは、幸せの涙が止まらなくなります。
そして映画でこんな感情になるのは、後にも先にも『フレンチ・カンカン』だけです。
ぜひ、このラスト20分間は大音量でお楽しみいただければと思います。
本作で2020年の始まりを迎えられるなんて、みなさんがうらやましい!
Let’s Enjoy!
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『フレンチ・カンカン』
DVD 1,429円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2019年12月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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