キノ・イグルーの週末シネマ​ no.41
グランド・ホテル|密室にはドラマがいっぱいホテルが舞台の映のカバー画像

グランド・ホテル|密室にはドラマがいっぱいホテルが舞台の映画

文:キノ・イグルー 有坂塁

グランド・ホテル|監督:エドマンド・グールディング(1932年・アメリカ)

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2018年03月30日作成



人々がやってきては、去っていく。

いろいろな人生が交錯する、ホテルという空間は、

これまでに幾度も、映画や演劇の舞台として使用されてきました。


偶然同じ日に宿泊しただけの人たち、そして限られた空間。

このふたつのポイントだけでも、

作家の想像力を喚起する題材であることは間違いありませんよね。


ところでみなさん、"グランド・ホテル形式"という言葉は

お聞きになったことがあるでしょうか?

これは「ある一つの大きな場所に様々な人間模様を持った人々が集まって、そこから物語が展開する」という、

映画や小説、演劇における表現技法のこと。

じつは、この手法の由来となったのが、何を隠そう今回の映画『グランド・ホテル』なのです。


***


ベルリンの高級ホテル「グランド・ホテル」に5人の宿泊客がやって来る。

人気が落ちて無気力なロシア人バレリーナ、賭博で地位も名誉も失ってホテルで盗みを働く男爵、

事業が危機に瀕した実業家、彼の速記秘書として雇われた実利的な女性、

不治の病に侵されて残り少ない人生を贅沢に謳歌しようとする老人。

彼らはホテルでの1日の滞在の間に、互いに交流を深めながら人生の交錯を繰り広げる。


***


出演は、1930年代に活躍していた5大スター、グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア、

ジョーン・クロフォード、ウォーレス・ビアリー、ライオネル・バリモア。

彼らが共演するというだけで、トップニュースになるような人たちです。


いまで言えば、ジョージ・クルーニー、コリン・ファース、クリント・イーストウッド、

エマ・ストーン、ケイト・ブランシェットといったところでしょうか。


この形式で映画を作るときのポイントになるのがキャスティングです。

役者としての実力や知名度にバラつきがあると、ストーリー全体のバランスが崩れる。

きちんとそれぞれに見どころがあって、その個性的な人物たちがつながるところに快感があるわけです。


主人公が救われてすっきりハッピーエンド!という通常の映画とは異なり、

"グランド・ホテル形式"の場合、複数のエピソードが次々に展開し、

円を描くようにストーリーが帰着する分、鑑賞後にじわーっとした余韻が残ります。

それぞれの人生を、反芻してしまうんですね。


もちろん、ホテルそのものの魅力も最大限に生かしているので、

『THE 有頂天ホテル』や『グランド・ブダペスト・ホテル』など、

ホテル映画が好きな方にも、必見の一本です。

この週末に、ぜひ。


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『グランド・ホテル』
Blu-ray 2,381円+税
DVD 1,429円 +税
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
(C)1932 Turner Entertainment Co. All rights reserved.

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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