あまりポジティブな意見を聞かない、漫画原作の映画化。
確かに"絵"としてヴィジュアルが存在するものを、
なぜあえて"映像化"するのでしょう。
「原作とイメージが違う!」と言われる確率も高いし、
映画化するリスク自体大きいと思うのですが…(やはり売れるからなのでしょうか)
しかし『リトル・フォレスト』には、明確な理由があります。
それは「美しい風景」と「おいしそうなごはん」を魅力的に見せたいから。
これだったら納得です。
原作に思い入れを持っているファンだって、
きっと実写版も観たいと思えるような好企画だと思います。
スタッフさんは、大変です。
本作の舞台は東北地方の山村で、
しかも春・夏・秋・冬という一年間を撮影するわけですから。
でも森淳一監督をはじめとするスタッフのみなさんは、
一切妥協することなく、美しい作品を完成させてくれました。
今回ご紹介するのは、そんな『リトル・フォレスト』の中から、
冬・春編になります(夏・秋編も以前紹介しています)
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一度は都会に出たものの、自分の居場所を見つけることができず、
東北の山間の小さな村・小森に戻ってきたいち子。
スーパーやコンビニもない小森での暮らしは自給自足で、畑仕事をしたり、
野や山で採れた季節のものを材料にして食事を作り、日々を過ごしている。
秋の終わりに、5年前の雪の日に
突然姿を消した母・福子から1通の手紙が届き、
いち子は今までやこれからの自分を思い、心が揺れ始める。
そうした日々の中でも季節はめぐり、
雪解けとともに春の足跡も近づいてくる。
来年もここにいるかどうかわからなくなったいち子は、
春一番で作付けするジャガイモを今年は植えるかどうか迷うが…
***
いち子が暮らす家は、住み心地が良さそうな古民家なのですが、
冬編は容赦ない雪と猛吹雪のため、とにかく寒そう!
彼女はこたつや薪ストーブで暖をとりながら、
長い長い冬を工夫しながら過ごしています。
東北の冬の厳しさが体感レベルで伝わってくるような冬の時間です。
一転、雪解けの春を迎えると、あたたかな映像へ早変わり。
いち子は春うららかな古民家の縁側で猫との時間を楽しんだり、
桜のトンネルを自転車で駆け抜けたりと、
春を迎えたよろこびが映像にあふれ出ます。
観ているだけで、心がウキウキしてくるような映像です。
食べ物にも注目してください。
冬ならなっとう餅やラディッシュの即席漬け、
春ならつくしの佃煮や春キャベツのかき揚げなど、
もう胃袋をわしづかみにするものばかり登場します。
中でも、塩マスとノビルと白菜の蕾菜のパスタがとにかくおいしそうで、
鑑賞後に再現したくなること間違いなし!な一品となっています。
最後に、映画を楽しめた方はぜひ記憶があるうちに、
原作も読んでみてください。
こちらは漫画ならではの良さが詰まっていますので、
『リトル・フォレスト』の世界を立体的に楽しむことができると思います。
この週末にぜひ。
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『リトル・フォレスト 冬/春』
DVD 3,800円+税
ブルーレイ 4,700円+税
発売・販売元:松竹
(C)「リトル・フォレスト」製作委員会
※前編となる『リトル・フォレスト 夏/秋』も上記同価格にて発売中
※2019年3月時点の情報です
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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