2019年、ハリウッドにおける女性監督の数が、
記録的高水準になったと発表されました。
しかも『アナと雪の女王2』や『キャプテン・マーベル』など
12人もの女性監督作品が、興行収入の上位にランクイン。
これまでは、『ピアノ・レッスン』やアニエス・ヴァルダなど、アート系の作品に偏っていましたが、
ついにハリウッドメジャーでも、女性の才能が求められる時代へと変わってきたようです。
これは、うれしい!(ぼくは、男性社会がどうにも苦手なのです、、、)
#MeTooムーブメントからわずか2年ちょっとで、
映画界における女性の立場はドラスティックに変化しつつある。
では、日本はというと、
河瀬直美監督(萌の朱雀)、西川美和監督(ゆれる)、荻上直子監督(かもめ食堂)など、
才能あふれる人材はいるものの、大きな流れへと至ることはなかったのですが、
2015年前後に、風向きが急激に変わります。
ショートフィルム発表の場の増加とともに、
女性監督がドドッと表舞台へと姿をあらわし始めたのです。
そのムーブメントの中心人物が、1989年生まれの山戸結希監督。
上智大学・文学部哲学科出身。
さまざまな分野で活躍する女性にフォーカスした TV番組「セブンルール」に出演していたので、
ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
その彼女が監督だけでなく、企画・プロデュースまで手がけた作品が『21世紀の女の子』。
こちらは、1980年代後半~90年代生まれの新進女性監督15人で作り上げた短編集になっています。
こんな内容です。
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"自分自身のセクシャリティ、あるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること"
を全篇共通のテーマとし、総勢15名が集結したオムニバス作品。
主演には橋本愛、朝倉あき、石橋静河、伊藤沙莉、唐田えりか、
黒川芽以、瀧内公美、日南響子、松井玲奈、三浦透子、モトーラ世理奈を迎え、
未来を期待される面々が邂逅。
シスターフッド溢れる"21世紀の女の子に捧げる挑戦的短篇集"が誕生した。
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個人的に感じる女性監督のよさは、理屈っぽくないところ。
言葉で捉えきれない感覚を、"映像と音"で表現しようとする人が多い。
だから映画が重くならないんです。
何かと説明をしたがる男は、《言葉》や《意味》の時代においては優位でしたが、
価値観が多様化された現代は《イメージ》の時代。
コミュニケーションの仕方も、文字から、
スタンプや写真へと移行しています。
答えはもうひとつじゃないし、ミリオンヒットが生まれないこともみんな知っている。
自分の"感覚"で世界をキャッチし、自分の手で発信する。
そうなると、共感力も高い女性が求められるのは、
もはや時代の必然かと思います。
そこに意識的な山戸結希監督は、まさに時代の寵児。
本作の彼女の監督作品『離ればなれの花々へ』は、文句なしの大傑作です。
美しい花々と夏の光。瞬間であるがゆえの刹那さ。
8分間ながら、後半のエモーショナルな高まりには、
ただただ圧倒され、涙が止まりませんでした。
「1人でも多くの女の子が、映画を撮り始めてほしい」
21歳にして、自らのキャリアだけでなく、
"女の子"と"映画界"の未来を俯瞰して捉えている彼女。
この時代が産んだ山戸結希という才能に、
ぜひみなさま、いまの時代の空気の中で触れてみてくださいね。
※まずはYouTubeで、おとぎ話「COSMOS」のミュージックビデオを検索!
これも彼女の代表作のひとつです。心が震えるとはこのこと!
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『21世紀の女の子』
Blu-ray 5,500円+税
DVD 4,500円+税
発売・販売元:バップ
©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū-ki Yamato
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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