みなさん、ライフワークってお持ちですか?
ぼくには「映画ノート」というものがあります。
といっても、映画の鑑賞記録ではなく、いわば出会いの記録のようなもの。
仕事やプライベートなどで出会ったさまざまな人たちに、
"自分の好きな映画"を、1ページで好きなだけ書いてもらう、
というプロジェクトです。
ものの数分で50本近く書く人や、
『紅の豚』1本という潔い良い人まで、
選び方や書き方に、それぞれ個性が浮かび上がってきて、
なんとも面白いのです。
このノートを、25年、つづけています。
ノートは8冊目、3,000人近くの方に書いていただきました。
続けることからしか見えないものがあると、ぼくはかたくなに信じています。
それは、もしかすると、
映画『スモーク』の主人公オーギーから学んだのかもしれません。
無意識のうちに。
本作は、アメリカの人気作家ポール・オースターが発表した
短編小説「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を元にしたヒューマンドラマ。
1995年の日本公開時は恵比寿ガーデンシネマで
25週に渡るロングランを記録した不朽の名作映画です。
***
1990年ブルックリン――。
街の片隅で煙草屋を営むオーギーは10年以上にわたり、
毎日同じ場所で同じ時刻に写真を撮影している。
煙草屋の常連客である作家ポールは、数年前に妻を亡くして以来、
スランプに陥っていた。
ある日、ポールは路上で車にひかれそうになったところを
ラシードという少年に助けられ、彼を2晩ほど自宅に泊めてあげることに。
その数日後、ポールの前にラシードの叔母だという女性が現われ…
***
そう、オーギーは、ブルックリンの一角でタバコ屋を経営しながら、
10年以上もの間、毎日、同じ場所で、同じ時刻に、
店の前の街を写真に撮っているのです。
そしてこれらをまとめたアルバムをポールに見せるとき、
彼はこんな言葉を投げかけます。
「ゆっくり見なきゃダメだ。
同じようでも、一枚一枚、全部違う。
よく晴れた朝、曇った朝。夏の陽射し、秋の陽射し。ウィーク・デー、週末。
厚いコートの季節、Tシャツと短パンの季節。同じ顔、違った顔。
新しい顔が常連になり、古い顔が消えてく。
地球は太陽を回り、太陽光線は、毎日、違う角度で差す。」
ここから、物語は大きく動き出すのです。予想もしない方向に。
こんな素敵なドラマを見てしまったら、
あなたも自分らしいライフワークを見つけたくなるはず。
この週末が、その第一歩となりますように。
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『スモーク デジタルリマスター版』
Blu-ray 3,800円+税
発売・販売元:ポニーキャニオン
(C)1995 Miramax/NDF/Euro Space
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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