「恋愛というのは逃れられないもの。理屈ではありません。
雷のように落ちてくるものですから、打たれるしかないのです。」
こう語っていたのは、瀬戸内寂聴さん。
考えれば考えるほどにわからなくなる、
「恋」って、いったい、何なのでしょうか?
恋に落ちる、という言葉もあるように、
恋はしようとしてするものではなく、落ちてしまうもの。
実用日本語表現辞典で、"恋に落ちる"を調べると、
「恋してその状態から抜け出せなくなるさま、
恋焦がれる状況から身動きが取れなくなるさまなどを表す言い回し」
とあります。
寂聴さんとまったく同じお言葉。これぞ、真理。
そして映画の中では、
この"恋に落ちる"瞬間を目撃できてしまうという面白さがあります。
およそ現実世界で、その瞬間を目にするなんてほとんどありません。
そう考えてみると、ラブストーリーが人気ジャンルなのも大いに納得できます。
今回は、そんな数多ある"恋に落ちる"瞬間の中から、
屈指の名シーンを描いた『(500)日のサマー』をご紹介します。
まずは、ストーリーからご確認ください。
***
建築家を夢見つつ、グリーティングカード会社で働くトムは、
ある日、秘書として入社してきたキュートなサマーに一目惚れしてしまう。
トムは運命の恋を夢見る男の子、
一方サマーは真実の愛なんて信じない女の子だった……
好きな音楽をきっかけに意気投合し、いいムードになった二人。
そんな中トムは、サマーに対して「彼氏はいるの?」と聞くと、
サマーの答えはノーだった。
恋愛と友情の間に果てしなく広がるグレーゾーン。
人を好きになるって、どうしてこんなに楽しくて切ないんだろう。
誰もがまた恋したくなる、二人の(500)日がはじまる!
***
上の説明では"恋に落ちる"瞬間を、
「キュートなサマーに一目惚れしてしまう」という一言で紹介しましたが、
詳しく書くと、こんな感じになります。
「サマーとトムが出会って3日目。
二人はエレベーターで一緒になります。
サマーのことが気になっているトムでしたが、
話しかけられずヘッドフォンをつけて音楽を聴いていました。
すると、なんとサマーから話しかけられます!
【私もザ・スミスが好き。いい趣味ね。】
そしてサマーは、エレベーターを降ります。
共通の趣味を知ったトムは、これを運命だと感じたのです。」
どうですか?いいでしょ。
文化系の人にとっては、まさに夢のようなシチュエーション。
そして、不意に話しかけられたことも大きかったのだと思います。
ドキッとした瞬間に、"ザ・スミス"というワードが出たのだから。
そりゃ、恋に落ちるってものです。
トムは、とてもロマンチックで、恋に恋するようなタイプ。
サマーにぞっこんな彼の思いは、ボリウッドばりのダンスシーンや、
アニメーションの青い鳥として軽やかに表現されていきます。
このポップな演出と、妄想癖のあるトムの個性が混ざり合うと、
やはり彼が"恋に落ちる"瞬間は、
あの描き方しかなかったなーと、強く思うのです。
キャラクターの描き方にブレがない。お見事です。
この物語は、すべてトムの視点で描かれた彼の記憶で、
じつはサマー視点の映像というのは、一つも出てきません。
そんなありがちなラブコメに見せかけて、
エッジの効いた青春映画でもある『(500)日のサマー』。
観るたびに新たな発見もあるので、
ぜひ繰り返し観ることをオススメします。
Enjoy!
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『(500)日のサマー』
ディズニープラスのスターで配信中
© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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