キノ・イグルーの週末シネマ​ no.15
素晴らしき哉、人生|泣きたい?笑いたい?人生最後の日に観たい映のカバー画像

素晴らしき哉、人生|泣きたい?笑いたい?人生最後の日に観たい映画

文:キノ・イグルー 有坂塁

素晴らしき哉、人生|監督:フランク・キャプラ(1946年・アメリカ)

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2017年09月29日作成



まっしろなクリスマス。

街はずれにある、小さな映画館で上映されるのは、

名作映画『素晴らしき哉、人生』。


その日の最終回となる夜の回は、観客がぼくひとり。

「クリスマス映画の定番なのにもったいなあ」

なんて気持ちと同時に、ぼくのためだけに映写をしてくれる

映写技師さんへの感謝の想いが溢れてきます。


映画館併設のコーヒースタンドで

あったかいカプチーノを買って、

いよいよ130分の旅のスタートです。


**


"ジョージは絶望感から、クリスマスの夜に自殺を考える。
 
 それを助けたのは二流の老天使。

 彼は、ジョージの「生まれて来なきゃよかった」

 という発言を聞き入れ、

 いかに彼が素晴らしい人生を送ってきたかを教えていく。
 
 そして、最後に起こるクリスマスの奇跡"



エンドロール。


**


上映終了。

ぼくは席を立つことができません。

気を使ってくれたスタッフさんは、

離れた場所から掃除を始めます。

それでも、動きません。

10分以上経っているというのに。


そして映写技師さんがぼくを覗き込むと、

呼吸はなく、すでに息を引き取っていたのでした…

___


完全に映画の見過ぎだと思いますが、

これこそ、ぼくが理想としている人生の終わり方です。


映画館で最後を迎えたい。

作品は『素晴らしき哉、人生』でありたい。

年齢を重ねるごとに、

その強くなっている気がします。



映画の中のジョージは、自分の夢を何度も諦め、

そんな人生に絶望していました。

でもじつのところ彼は、

他の人の夢をたくさん叶えてあげていたのです。

誰もがいろんな人と関わり合って生きていて、

必要ない人なんて誰もいない。


映画の後半、

彼が"いなかった場合"のシーンが出てくるのですが、

ここがとにかく泣けるのです。

夢や奇跡を心から信じたくなる。


そんな人間の善意にあふれた作品を、

ぼくは人生最後の瞬間に観たい。

願わくば、クリスマスの夜に。


あなたは人生最後の日に、何の映画が観たいですか?


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『素晴らしき哉、人生』
DVD 2,200円+税
Blu-ray 3,800円+税
発売元:アイ・ヴィ-・シ-

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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