最初からモノや情報にあふれている時代。
ぼくらは、ライフスタイルのあらゆる場面で「選ぶ」ことが、当たり前になっています。
新聞を取らない、テレビを置かないなど、
少し前では考えられなかったことも、すでに違和感なく受け入れている。
ぼくたちの価値観は"秒速"で変化を重ねていっているわけです。
このスピード感と圧倒的な情報量がもたらしてくれる恩恵はたくさんあるのは事実ですが、
同時に、脳と体が無意識のうちにストレスも感じてもいる。
だからこそ、スローライフなど暮らしに心地よさを求める人が増えているのは
自然な流れだと思うのです。
中でも近年注目されているのが、
北欧のライフスタイルである「ヒュッゲ」や「ラーゴム」。
こちら、特に明確な定義はないそうで、
ざっくり言うと、このような価値観なのだそう。
家族や友人と親密な時間を過ごすこと。
シンプルであること。
仕事に縛られないこと。
自然を身近に感じること。
ささやかな生活の工夫に喜びを見出すこと。
今ここにある幸せを大切にすること。
そんなライフスタイルを感じることのできる映画は、いくつかあります。
なかでも、オススメなのは、アストリッド・リンドグレーンの原作映画。
元が児童文学ということもあり、
そこでは絵に描いたような憧れの暮らしが描かれています。
今回は、彼女の作品群のなかでも比較的マイナーな一作
『なまいきチョルベンと水夫さん』をご紹介してみようと思います。
***
ここはスウェーデン、避暑地のウミガラス島。
大きな笑顔と大きなおしり、ときに大人もたじたじとなる少女らしからぬチョルベンは、
愛犬"水夫さん"といつも一緒。
ある日チョルベンは、漁師からアザラシの赤ちゃんをもらいます。
モーセと名付けたそのアザラシを、
友だちのスティーナやペッレと一緒に飼い始めますが、
モーセに夢中のご主人様に愛犬の水夫さんは寂しそう。
そんなとき、一度はチョルベンにあげたアザラシが高値で売れると知った漁師は、
チョルベンたちから奪い返そうとし、さらには水夫さんがある事件に巻き込まれ…
はたしてチョルベンたちはアザラシの赤ちゃんを守り、
水夫さんを救うことができるのでしょうか!?
***
海や森に囲まれた場所で、動物や大人に守られながらのびのび生きるチョルベン。
彼女は、隣の叔父さんに、エンジンのかけ方のコツを教えたり、
スティーナにカエルの王子様の話を指南したりと、ちょっと偉そうなのがかわいいんです。
しまいには「地獄に落ちろ」なんて悪態までついたり 笑
でもその子どもらしさを、作品全体が、
おおらかに受け止めている感じが素敵なんです。
おまけに、もふもふの水夫さんや、つぶらな瞳のアザラシは愛くるしくてたまらないし、
スウェーデンの自然だって存分に楽しめます。もうね、癒ししかないんです。
テレビや携帯電話がなく、
釣りをして、ピクニックして、ともだちと一緒にお茶を飲む。
そんなシンプルなライフスタイルに憧れがある方は、
いますぐチョルベンのもとへ!
きっと、あなたが求めている大切な何かを
太っちょで、なまいきな彼女が教えてくれるはずです。
************************************************
『なまいきチョルベンと水夫さん』
DVD 3,800円+税
発売元:ミッドシップ
販売元:TCエンタテインメント
©1964 AB SVENSK FILMINDUSTRI ALL RIGHTS RESERVED.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
Instagram Web Site