まもなく母の日ということで、
僭越ながら、ぼくの母の話から始めてみようと思います。
現在70歳代の母トシコは、ぼくを含め、3人の子を育ててくれました。
大学を卒業したあとは、社会人になることなく、専業主婦に。
まもなくぼくら双子を産み、2年後に弟を出産。
そこから子育てがスタートするわけですが、ぼくが11歳のころ、
自らの意思で離婚を決断しました。
そこから、新たな人生が幕を開けるわけです。
しかし世の中は、離婚への認知がいまほどされていなかったこともあり、
"信用がない"という理由で、
家探しや就職活動で様々な壁にぶつかったのだそうです
(風向きが変わったのは、明石家さんまの離婚から!)
しかし、こどもを伸び伸び育てたい!
という信念に支えられ、壁をひとつひとつクリアしていきます。
その間、ぼくらに言い続けてくれた言葉は
「好きなことを見つけて、とことんやりなさい」
いろいろな意味で苦しい状況だったにもかかわらず、
一切ブレることなく、その言葉を言いつづけてくれました。
だからこそ、自分の心にまっすぐ向き合い続けて来れたのだと思います
(結果、サッカーの指導者、移動映画館、ファッションデザイナーと、
3人ともに好きなことを仕事に出来ているのだと思います)
さて、前置きが長くなりましたが、
そんな母の好きな映画のなかの1本が『愛と追憶の日々』なのです。
シャーリー・マクレーン演じるオーロラは、トシコと同じシングルマザー。
そこが関係あるかは聞いたことがないのですが、
映画に自らの人生を投影することが多い人なので、
きっとそうではないかな、と思います。
***
テキサス州ヒューストンで暮らすオーロラは、娘エマが幼い頃に夫に先立たれ、
それ以来すべての愛情を娘に注いでいった。やがて美しく成長したエマは、
大学教師フラップという母の望まぬ相手と結婚する。
その後フラップがアイオワの大学へ転勤することになり、
エマはヒューストンを去る。
一人になったオーロラだが、隣人の宇宙飛行士ギャレットと会話を交わし、
互いに惹かれていく。一方エマは、夫の浮気に悩まされるようになる…
***
この映画のゆるぎない中心軸は、母オーロラと、
デブラ・ウィンガーが演じる娘エマの独特な親子関係です。
一見ワガママに見える母は、ものすごい心配性で、
厳しいことをいろいろ言うのですが、最終的には娘の決断を受け入れます。
毎朝電話もしてくるけど、それ以上の束縛はしない。
彼女なりのやり方で、大きな愛を与えているんですね。
娘もそんな母の愛を確信しているからこそ、
自分の信じる道を迷わず生きていける。
もはや親子というよりも、年の離れた友人関係のように見えるのです
(ともにアカデミー主演女優賞にノミネートされ、シャーリー・マクレーンがオスカーを獲得)
うちの母トシコは、じつは、女の子が欲しかったのだそう。
名前まで決めていたものの、叶わなかったため、猫に命名。
だからより一層、本作のことが好きなのかなあ。
こんな母と娘の関係に憧れていたのかもしれません。
こんどの母の日にでも、聞いてみようかな。
************************************************
『愛と追憶の日々』
Blu-ray 2,381円+税
DVD 1,429円+税
発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2019年5月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
Instagram Web Site