時代を代表する才能が、偶然にも一堂に集結し、
やがてエポックメイキングな出来事として語られる…
そんなエピソードが、カルチャー史にはいくつも存在します。
例えば、ボサノヴァ。
無名時代のナラ・レオンの高級アパートメントの一室には、
同じく無名だったジョアン・ジルベルトや
アントニオ・カルロス・ジョビンなど、
後のレジェンドたちが出入りし、
そこで音楽的交流を深め、ボサノヴァは誕生しました。
"Bossa Novaは新しい潮流"という意味。
例えば、ヌーヴェルヴァーグ。
パリの映画館で夜な夜な開催されていた"シネクラブ"を通じて顔見知りになった
ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、
エリック・ロメールら若きシネフィル(映画狂)たち。
彼らはその後、短編映画を協力し合いながら何本も制作し、
その流れから『勝手にしやがれ』と『大人は判ってくれない』が誕生。
映画の世界を大きく変えることになったのです。
その運動は"Nouvelle Vague=新しい波"と呼ばれることに。
そして、2020年。
日本の映画界で、今後"エポックメイキングな一作"と
語り継がれる可能性のある作品が誕生しました。
内山拓也監督作『佐々木、イン、マイマイン』。
青春時代特有のきらめきと哀愁をパワフルに描き出した、
魂のこもった一作。時代が生んだ傑作。
きっと、下記のストーリーをお読みいただくだけでも感じ入るものがあるはずです。
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石井悠二は、俳優になるために上京したものの、鳴かず飛ばずの日々を送っていた。
別れた彼女のユキとの同棲生活も未だに続き、彼女との終わりも受け入れられない。
そんなある日、高校の同級生・多田と再会した悠二は、
高校時代に絶対的な存在だった "佐々木"との日々を思い起こす。
常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。
だが佐々木の身に降りかかる"ある出来事"をきっかけに、
保たれていた友情がしだいに崩れはじめる——。
そして現在。 後輩に誘われ、ある舞台に出演することになった悠二だったが、
稽古が進むにつれ、舞台の内容が過去と現在とにリンクし始め、加速していく。
そんな矢先、数年ぶりに佐々木から着信が入る。
悠二の脳内に鳴り響いたのは、「佐々木コール」だった…
***
どうです?
なかなか気になるストーリーですよね。
でも今回は、内容についてではなく
この映画にまつわる魅力的な人間模様を紹介したいと思います。
1992年生まれの内山拓也監督は、元々はスタイリスト志望で、
そのときにアシスタントとして映画の撮影現場に行くことがきっかけとなり、
監督になる決意をしたのだとか。
しかし長編デビュー作の『ヴァニタス』で
PFFアワード2016観客賞を受賞しながらも、バイト生活からは抜け出せず。
そのくすぶっていたときに、同じような状態だった佐々木役・細川岳と再会し、
彼から聞いた同級生の話をベースに『佐々木、イン、マイマイン』を作ることに。
細川岳は、
「自分の俳優人生を懸けてでも、この話を映画化しなければいけない!」と語りかけ、
内山監督は
「僕は絶対に自分で映画化したいと強く思い、俺とやろう!」と答えた。
もうこのエピソード自体が、The青春な感じがして最高すぎます。
そして、そんな2人の熱いエネルギーに引き寄せられるように、
俳優・スタッフともに、日本を代表する若き才能が集結します。
俳優陣では、
『his』の藤原季節、『お嬢ちゃん』の萩原みのり、『ゾッキ』の森優作、
『初恋』の小西桜子、『サマーフィルムにのって』の河合優実。
スタッフには、『ドライブ・マイ・カー』の撮影監督・四宮秀俊、
照明は『きみの鳥はうたえる』の秋山恵二郎、
スチールカメラマンには渋谷PARCOの2021年秋冬ファッションキャンペーンを手がけた木村和平と、新時代のクリエイターが大集結。
いつの日か、2020年代のポップカルチャーを振り返ったときに、
「映画は『佐々木、イン、マイマイン』がターニングポイントだったね」
と語られる可能性を秘めた大注目作だと思います。
ぜひ、今のうちにチェックしておくことをオススメします。
(合わせて、俳優・スタッフ名と一緒に紹介した作品もご覧になってみてくださいね)
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『佐々木、イン、マイマイン』
DVD 4,620円(税込)
発売・販売元:アメイジングD.C.
©「佐々木、イン、マイマイン」
『佐々木、イン、マイマイン』公式サイト
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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