キノ・イグルーの週末シネマ​ no.284
リトル・ダンサー|願えばきっと叶う夢見る心を忘れないのカバー画像

リトル・ダンサー|願えばきっと叶う夢見る心を忘れないで

文:キノ・イグルー 有坂塁

リトル・ダンサー|監督:スティーブン・ダルドリー(2000年・イギリス)

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2022年11月25日作成



「夢を見るから、人生は輝く」

との名言を残したのは、かのモーツアルトです。


未来に目を向けて、

実現したいことを心の中に持つことで(それはどんなことでも)

生きていく日々が尊いものになる。

大人になると、夢を描くことを忘れてしまいがちですが、

決して若者の特権ではないし、

おじいちゃんだって、おばあちゃんにだって、等しく存在するもの。

(エレノア・コッポラなんて、

80歳にして映画『ボンジュール、アン』を初監督!)


何歳になったって夢を持っている人は魅力的です。

目は澄んでいるし、言葉や佇まいからも、ポジティヴなエネルギーが溢れている。

そして子を持つ親としては、こうも思います。

子どもに夢を持たせたければ、大人こそが夢を持つことが大事だと。


映画には"夢"が詰まっています。

たったの2時間で、国籍も人種も性別も年齢も異なる誰かを通して

夢を叶えることができる(そうではないものもありますが)


そんな夢の詰まった素晴らしい映画の中から、

今回は「夢を見るから、人生は輝く」を地でいく

『リトル・ダンサー』をご紹介したいと思います。


イングランド北東部の炭鉱町を舞台にした、爽やかなヒューマンストーリー。

内容は、このようになっています。


***


1984年。

イギリスの炭坑町に住む少年ビリーは、偶然目にしたバレエ教室に惹かれ、

女の子たちに混じって練習するうち夢中になっていく。

めきめき上達する彼に自分の夢を重ね、熱心に指導するウィルキンソン先生。

しかし大事なお金をバレエに使うことを知った父は激怒し、教室通いを禁じる。

先生はビリーにロイヤル・バレエ学校のオーディションを受けさせたい一心で

無料の個人レッスンを行うが、

オーディションの朝、炭鉱夫の兄トニーがスト中に逮捕される。


***


いろいろな問題を抱えながら、明るい未来が見えなくても、日々を生きてゆく。

そうして生きていると、

どうしたって自分たちに明るい未来はないのだと思ってしまいます。

そんな人たちばかりが住む街の、小さなバレエ・ダンサーがビリーです。

ビリーはバレエに救われ、今度はビリーが未来を諦めた父や兄の希望になっていく…


ここにこの映画の決定的な良さがあると思います。

つまり、どんな才能に恵まれた人だって、

けっして1人で生きているわけではないんですよね。


主人公の成長を手助けたバレエの先生。

息子の才能に気づいて変わろうとする父、それを見て自分も変わろうとする兄。

一人の努力が周りの人たちの心に影響を及ぼしていく可能性があるということを、

この映画は教えてくれます。


それに加えて「1980年代。労働者階級の男がバレエをする」

というイギリス階級社会ならではの難しさが加わるわけです。

ここのバックグラウンドがより理解できると、

さらに感動は深いものになるので、鑑賞前にでも調べてみてください。

目一杯、想像の翼をはばたかせながら。


家族の愛、ビリーの思い、夢と現実。

観た人の人生を肯定し、支えてくれる映画であり、

何度観ても心揺さぶられる素晴らしい作品です。


この週末に、ぜひ。


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『リトル・ダンサー』
価格 Blu-ray ¥2,200(税込)
発売・販売元 KADOKAWA

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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