キノ・イグルーの週末シネマ​ no.49
セッション|勝ち負け関係なし熱き名勝のカバー画像

セッション|勝ち負け関係なし熱き名勝負

文:キノ・イグルー 有坂塁

セッション|監督:デイミアン・チャゼル(2014年・アメリカ)

5
2018年05月25日作成



熱き名勝負と言ったら、やっぱりスポーツです。


サッカーだと、本拠地が同じ都市にあるチーム同士のダービーマッチや、

バルセロナvsレアル・マドリードみたいな超名門同士の対決まで、

数え切れないほどの名勝負が存在します。

いずれもスポーツとしてだけでなく、民族間の対立や、

社会的なバックグランドまで含まれているところがおもしろい。

その分、問題も根深いんですけど。


ところが、個人スポーツになると、目的意識がはっきりしてきます。

いわゆるライバル対決。浅田真央vsキム・ヨナや、北島康介vsハンセンなど、

絶対に負けたくないというプライドをかけた戦いになるので、

マスコミ的にも物語が作りやすく、視聴者も感情移入がしやすい。


では、今回の作品はスポーツもので、ロッキー!

なんて言ってしまうと、少しばかり芸がないので、

ここはスポーツ的なアプローチで音楽家同士の名勝負を描いた『セッション』をあげてみようと思います。


***


名門音楽大学に入学したニーマンはフレッチャーのバンドにスカウトされる。

ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然。

だが、待ち受けていたのは、

天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない

〈完璧〉を求める狂気のレッスンだった。

浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。

ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。

恋人、家族、人生さえも投げ打ち、

フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマン。

しかし…


***


本作は物語の構造がとってもシンプルです。

「ニーマンの負けん気と、フレッチャーの狂気的な指導」。

潔くストーリーはこの一点に絞られています。

余計な要素を加えない、引き算の美学とでも言いましょうか。


そんな二人の才能と狂気が激しくぶつかり合うストーリーは、

ジェットコースターに乗ってるかのようなスピード感と、

息をする余裕もないほどの緊張感をもって爆走していきます。

どこへ着地するのかも、完全に予測不能です。


そして…

「ラスト9分19秒 映画史が塗り替えられる」

というキャッチコピー通りの衝撃が、あなたを待ち受けているのです。


本作は、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督が、

弱冠28歳のときに作り上げた渾身の傑作。

この映画史に残る名勝負は、

ぜひ長谷部キャプテンのように心を整えてから、

ご覧になることをオススメします。

いい意味で、心をかき乱されること間違いなしですので。


************************************************
『セッション』
DVD 1,800円(税抜)
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ 販売元:ギャガ
(C)2013 WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
Instagram    Web Site

バックナンバー

アプリ限定!
12星座占い、天気予報と気温に合わせたコーデをお楽しみいただけます

お買いものも
キナリノアプリで◎

キナリノアプリ

「これが好き」「これが心地よい」と感じてもらえるお買いもの体験と情報を。自分らしい暮らしがかなう、お買いものメディア

App Store バナーGoogle Play バナー