ぼくたちの時代のクリスマス・ムービーがほしい。
そうぼやいていたぼくに、
「来年、とんでもないクリスマス映画が公開されるよ!」と教えてくれたのは、
クリスマスとビル・ナイをこよなく愛する友人でした。
彼女が言うには、その映画の舞台はクリスマスのロンドンで、
監督はあの傑作『ノッティングヒルの恋人』の脚本家。
しかもアンサンブルキャストだから、
様々なバージョンのクリスマスが楽しめるはず!
と、すでに興奮を隠しきれていませんでした(ビル・ナイも出演してるから余計に)
その公開前から期待値マックスだったクリスマス・ムービーが、
2004年に公開された『ラブ・アクチュアリー』だったのです。
***
12月のロンドン。
クリスマスを目前に控え、誰もが愛を求め、
愛をカタチにしようと浮き足立つ季節。
新たに英国の首相となったデヴィッドは、国民の熱い期待とは裏腹に、
ひと目惚れした秘書のナタリーのことで頭がいっぱい。
一方街では、最愛の妻を亡くした男が、
初恋が原因とも知らず元気をなくした義理の息子に気を揉み、
恋人に裏切られ傷心の作家は言葉の通じないポルトガル人家政婦に恋をしてしまい、
夫の不審な行動に妻の疑惑が芽生え、
内気なOLの2年7ヵ月の片想いは新たな展開を迎えようとしていた…
***
クリスマスの5週間前から始まる物語は、
"クリスマスまで5週間" "クリスマスまで4週間"…
と次第にクリスマスへ近付いていき、
やがて聖なる夜にそれぞれのクライマックスを迎えます。
この映画の設定自体が、クリスマスへのカウントダウンを楽しむ
アドベント・カレンダーのようなんですね。
意識してるかはわかりませんが、
作り手のクリスマス愛が強すぎて自然にこのスタイルになったと、
クリスマス好きのぼくは勝手に解釈しています(ちがうか)
お楽しみのクリスマスソングは、定番の「White Christmas」だけでなく、
マライア・キャリーの「All I Want for Christmas Is You(恋人たちのクリスマス)」のカバーが使用されていたことに感動!
古き良きクリスマスではなく、新時代のクリスマスムービーを作るんだ!
という心意気のようなものを感じました。
余談になりますが、この楽曲は、
オープニングのハンドベルやコーラス、鈴の音などをうまく使い、
クリスマスのワクワク感をそのままサウンドにしてしまったような、
20世紀最高のクリスマスソング。
ワム!や山下達郎が定着していた90年代半ばに鮮烈に登場し、
膠着気味だったクリスマスシーンに、
新時代のインスピレーションを与えてくれたのです。
本作ではその名曲を、当時11歳だった少女
オリヴィア・オルソンがソウルフルに歌い上げています。
子供らしからぬ歌唱力だったため、
少しへたっぴに歌ってもらったという裏話があるのですが、
それでも超絶上手いから驚きます。
ビル・ナイの歌う「Christmas Is All Around」も違った意味で最高だし、
ほかにも語りたいことは山ほどあるのですが、
キリがないのでこの辺にしておきます。
何はともあれ『ラブ・アクチュアリー』は世界中で大ヒットし、
"新時代のクリスマス・ムービー"として広く認知されることとなったのです。
未見の方は、ぜひクリスマスまでに観ることをおすすめします。Enjoy!
追伸:本作と同じ2003年のアメリカでは、
じつは最高すぎるクリスマスムービーがもう1本公開されていました。
この話は、またどこかで。
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『ラブ・アクチュアリー』
DVD 1,500円(税抜)
発売・販売元:株式会社KADOKAWA
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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