キノ・イグルーの週末シネマ​ no.123
島の色 静かな声|地域に根付いた美しい手しごのカバー画像

島の色 静かな声|地域に根付いた美しい手しごと

文:キノ・イグルー 有坂塁

島の色 静かな声|監督:茂木綾子(2008年・日本)

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2019年10月25日作成



12年前の冬に読んだ雑誌「クウネル」に、印象的な記事がありました。

メイン特集は、「どんな住まい?」。

この中に、スイスに住むあるアーティスト夫婦の日常が、美しい写真とともに紹介されていたのです。

"森と湖に囲まれて 車輪のうえで暮らす家族"というタイトルで。


スイスの小さな村、その湖のほとりに、ワゴン車を住まいにして暮らしていたのは、

写真家の茂木綾子さんと、映像作家であり夫のヴェルナー・ペンツェルさん。

そしてお子さまが2人。


彼らはどこに住むかということさえも、ある種、ひとつの表現と考えている。

その固定概念に縛られていない豊かさと、全身から溢れ出ているエネルギーに、

ぼくの心は、まっすぐ惹きつけられたのです。


すると、その翌年に茂木さんが監督した最新映画が公開されるというではありませんか。

しかもその作品は、ある人に密着したドキュメンタリーなのだということがわかり、期待は高まるばかり。

これだけ素敵な人生を歩んでいる人が、果たして、どんな相手に興味を持ったのか。

カメラを向けてしまうほどに、心を惹かれたのか。


2008年、渋谷にあった映画館「シネマ・アンジェリカ」で公開された

『島の色 静かな声』は、このような内容でした。


***


糸を染め、布を織る、染色作家・石垣昭子と、

島唄や祭りをこよなく愛する夫の石垣金星(きんせい)。

ゆっくりと流れる島の時間の中、紡がれる白い糸、

鮮やかに染め上がり織り上げられていく布には、自然と人の魂が宿る。

自然から生まれ自然へと還る人の暮らしを守り伝えようとする、

ユーモラスな夫婦の日常の記録。


***


酒に酔って唄い、神に祈り、犬と遊ぶ。

たくましく大地に根を張った生き様を見せてくれる昭子さんと金星さん。


島の生活に入り込んだ映像は、ナレーションは入らず、

個性的なアングルで等身大の島の生活を切り取ります。

波、はた織り、鳥のさえずり、三線(さんしん)の響く音。

茂木監督は、人々の暮らしの中にある純粋な美を、

彼女にしか写し出すことのできない詩的な映像と繊細な音響で記録していきます。


とくに印象的だったのは、石垣昭子さんが糸を紡ぐ場面。

バナナの芯の部分を裂いて、煮て、繊維を一本一本とりだして糸を作る。

ひと巻きだけでも相当な労力なのに、ここから一枚の布を作るわけです。
想像をしただけでも気が遠くなる。

でも彼女たちは、なんとも楽しそうに歌いながら作業をするんですね。

ここが、すごくいい。この"気"さえも宿るのだから。

「ゴミになるような物なら作らない方がいい」という昭子さんの言葉は、

この映像を通すと、何倍にもなって心に染み入るのです。


ゴミ問題、リゾート開発など、

現実的なメッセージも込められた力強い映像詩。至福の75分。

泡盛とともにぜひ。


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『島の色 静かな声』
DVD 3,300円(税込)
カタログ 1500円(税込)
販売元:一般社団法人サイレントヴォイス
※本商品は、こちらよりご購入いただけます
http://silentvoice.jp/shimanoiro/news/shop.htm

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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