キノ・イグルーの週末シネマ​ no.170
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シェフ 三ツ星フードトラック始めました|シンプルなことで人は変われる

文:キノ・イグルー 有坂塁

シェフ 三ツ星フードトラック始めました|監督・製作・脚本:ジョン・ファヴロー(2014年・アメリカ)

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2020年09月18日作成



自分を変える第一歩は、"習慣"を変えること。

何を考え、誰と会って、どこで過ごすのか。

日々の時間の使い方を変えてみる。


"私"というのは、小さな選択の積み重ねで出来るものなので、

それまでの自分をマイナーチェンジさせるイメージで、

日常を心がよろこぶ方に変化させる。

自分のリズムでゆっくりと。心を整えながら。


なんて、人生相談の解答みたいになってしまいましたが、

でも、その"習慣"を変えていく過程に、刺激的なインプットが加わると、

成長速度は何倍にも増して上がると思うんです。


その刺激物として、ぜひ観てもらいたい映画が、

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』。

「自分を変えたい」と願うすべての人に、

"二重の意味" で勇気を与える作品となっています


まずは、ストーリーをどうぞ。


***


ロサンゼルスにある一流レストランの<総料理長>カール・キャスパーは、

メニューにあれこれと口出しするオーナーと対立し、突然店を辞めてしまう。

次の仕事を探さなければならない時にマイアミに行った彼は、

絶品のキューバサンドイッチと出逢う。

その美味しさで人々に喜んでもらう為に、移動販売を始めることに。

譲り受けたボロボロのフードトラックを改装し、

マイアミ~ニューオリンズ~オースティン~ロサンゼルスまで

究極のキューバサンドイッチを作り、販売する旅がスタートしたのです!


***


このキャスパーという人物、じつはバツイチです。

仕事に一途なゆえに、私生活がうまくいかず、離婚をし、

息子との間にも溝があり、仕事までうまくいかないという、八方塞がり状態。


しかし、周囲の人たちのおかげで、

苦境を脱出するきっかけを彼はつかむことができます。

その人たちの存在なくして、あれほどの幸せを掴めるわけないし、

キャスパーは、そんな自分のことを「人に恵まれていただけ」と言うかも知れません。


でも、思うんです。

それもこれも、彼自身が魅力的だったからなんですよね。

愚直に"心がよろこぶ方"へ突き進んだ、

そのエネルギーの結果なんだな、と。


こんなセリフからも、彼の人柄がわかると思います。


「パパは料理が大好きだ。料理から色んな喜びを与えてもらったからだ。

パパは完璧じゃない。欠点は多いし、良い夫じゃなかった。

良いパパでもないのかもしれない。でも料理は上手い。

だから、お前に教えたい。学んだ事を伝えたいんだ。

料理で人をちょっと幸せにできる。それがパパの喜びなんだよ。

お前もやったら分かるかもしれないぞ。」


どうです?最高ですよね。


そのキャスパーを演じた俳優とは、ジョン・ファブロー。

彼は、『アイアンマン』シリーズの監督も務めるハリウッド屈指の才人で、

本作では、製作・監督・脚本・主演という4役を務めています。


そしてこの映画は、ファブロー自身が

"どうしても作らなければならない"訳あり作品でもあるのです。


過去に、彼が手掛けたメジャー映画は、

プロデューサーに言われるがままに作っていた作品ばかりで、

本当に作りたかったものでなかったよう。

ヒットはするものの、批評家からは「酷評」の嵐で、

次第に、彼の心は疲弊してしまったそうです。


その限界ギリギリのときに企画した作品こそが、

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』。


「この世でいちばん幸せなことがある。なんだと思う?

自分が一生懸命作ったものを人に味わってもらうことだよ」。

このセリフはダブルミーニングになっていて、

料理のことを言いながら、"映画"という意味にも置き換え可能です。


そう、キャスパー役は、

ジョン・ファブローという人の人生そのものでもあるのです。

そんな"物語"と"実人生"が複雑に重なり合った、

本気のヒューマンストーリー。


自分を変えたい!と悩んでいる方、とにかく観てください。


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『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
DVD 1,280円(税抜)
発売中
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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