「東京の中で、好きな街はどこですか?」
と100人に質問すれば、きっと、いくつもの名前があがることでしょう。
銀座、新宿、渋谷、池袋というビッグシティから、
中目黒、西荻窪、清澄白河、松陰神社など、
独自のカルチャーを形成している小さな街まで。
どの街を選ぶかで、その人の性格まで見えてきそうな特徴的な街が
東京には数多く集まっています。
(ぼくはホームタウンでもある吉祥寺を愛しています)
しかし、こと映画なると、
ウディ・アレンのニューヨークや、ヌーヴェルヴァーグのパリのような
魅力的な東京の風景というものを観ることがほとんどありません。
なぜか?
その主な理由は、道路使用許可が降りにくいという
ハード面での問題があるのだそう。
そしてそれを逆手に取ったのが『君の名は。』などのアニメーションや、
『シン・ゴジラ』といったCG作品だったりするのですが…
さて、今回はそんな中から、とても興味深い作品をご紹介したいと思います。
なんと、世界の鬼才3人が切り取った"東京"を楽しむことができるという、
贅沢なオムニバス、その名も『TOKYO!』です。
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『インテリア・デザイン』
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:藤谷文子、加瀬亮、伊藤歩、大森南朋、妻夫木聡、でんでん 他
とある地方から恋人とともに上京してきた女性。
映画作家を目指す彼について東京へやってきたが、
自分自身の目的のなさを実感する。
「なぜ私はここにいるのだろう…?」ある日、彼女は体の異変に気づいた。
肋骨の一部が木になってきているのだ!
『メルド』
監督:レオス・カラックス
出演:ドゥニ・ラヴァン、ジャン=フランソワ・バルメール、石橋蓮司、北見敏之、嶋田久作 他
東京に戦慄が走る!
不可解な人物が下水溝から神出鬼没に現れるのだ!
言葉も通じず、存在自体が異様。
メルドと呼ばれるこの男は、繁華街で事件を起こし逮捕される。
裁判で不条理な発言を繰り返す男に市民の声は賛否両論に分かれる。
男の存在を認めるやいなや…判決が下されようとしている。
『シェイキング東京』
監督:ポン・ジュノ
出演:香川照之、蒼井優、竹中直人、荒川良々、山本浩司、松重 豊 他
10年間引きこもりを続ける男。ある日、彼はピザ配達の女性に恋をしてしまう。
勇気を振り絞って、彼女に会いに行こうと外に出ると、
東京中が引きこもりになっていた!
恋した彼女もまた家に引きこもってしまったのだ!
彼女を見つけだす男。その刹那、地震が都市を揺らし始める…
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みなさん、この監督たちの名前は聞いたことがあるでしょうか?
それぞれに異なる特徴を持った超個性派で、
ここ30年ほどの映画界でビッグインパクトを残している3人。
そんな豪華メンバーが集まっただけでも奇跡なのに、
なんと彼らが"東京"を舞台に映画を撮ってくれたのです!
これは日本人としては観ないわけにはいかないですよね。
おそらく世界中の映画ファンたちは
「なんで東京なんだー!」と嫉妬しているに違いありません。ふふふ。
実際にそれぞれが東京のどの街を舞台にしたかは、ここでは申しません。
ぜひ「どこの街かな?」と考えながら、
個性的な物語をお楽しみいただければと思います。
最後に、まだ3人を知らない方のために、
オススメ映画もご紹介しておきますね。
完全なる独断と偏見ですが、
ゴンドリーなら『エターナル・サンシャイン』、
カラックスは『汚れた血』、
ポン・ジュノだと『殺人の追憶』といったところでしょうか
(異論反論は受け付けません)。
もし『TOKYO!』の中でお気に入りエピソードが見つかったら、
こちらの長編作品もご覧になってみてくださいね。
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『TOKYO!』
DVD 4,800円+税
発売・販売元:バップ
© 2008「TOKYO !」
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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