キノ・イグルーの週末シネマ​ no.75
パリ、テキサス|いまでも新鮮ニットの着こなのカバー画像

パリ、テキサス|いまでも新鮮ニットの着こなし

文:キノ・イグルー 有坂塁

パリ、テキサス|監督:ヴィム・ヴェンダース(1984年・西ドイツ/フランス)

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2018年11月23日作成


「キナリノ読者もドキッとするような着こなしをお願いします」

というのが今回の裏オーダーでした。

ニットの着こなしだけでなく、ドキッとするもの。

条件が増えると、普通、作品選びは難しくなるのですが、

今回はなんと1秒で決まりました 笑


それが、ドイツ人のヴィム・ヴェンダースが1984年に製作した

ロードムービーの名作『パリ、テキサス』になります。


***


テキサスの砂漠に実在するといわれている「パリ」を探して

放浪の旅に出たトラヴィス。

疲労のあまりガソリン・スタンドで倒れ込み、

病院からの知らせを受けた弟に連れられ、ロサンゼルスの自宅に帰ると、

4年前に置き去りにした幼い息子と再会する。

しかし、妻ジェーンの姿はない。

トラヴィスは息子と次第に親子の関係を取り戻してゆき、

共に蒸発したジェーンを捜す旅に出るが、

紆余曲折をへてめぐり会った彼女に、

彼は愛するがゆえの苦悩を打ち明ける…


***


ニットの主は、妻ジェーン役を演じたナスターシャ・キンスキー。

DVDジャケットにも写っている、

この赤いニットが今回ご紹介したい一品です。

背中の大きく開いたモヘアの赤ニット、じつはこれ、

Vネックのものを前後逆に着ているのだそう。

この後ろ部分が開きすぎてる感じが、セクシーでかわいい。

すれすれで下品にまでいかないあたり、さすがはナスターシャ。


そんな彼女の魅力もさることながら、

観た人のほとんどがこの赤いニットを忘れられないのは、

別の秘密があったりします。


それは、映画全体の色彩設計です。

本作のベースとなる色調は、モノトーンと緑がかった青。

主人公が旅するのはテキサスの荒野のため、色が少なく、

砂ぼこりでぼやっとした風景になっています。

そう、まるで赤を強調させるために考えられたかのような

画面構成になっているのです。


実際にメインどころで赤が出てくるのは、

最初のトラヴィスの帽子と洋服、

ジェーンが登場するときに乗っていた車の色と赤いセーター、

あとはラストの夕日ぐらいです(細かいところは置いておきます)


本作の最重要ポイント、ジェーンとトラヴィスの関係においてのみ、

赤を使用するという潔さ。

中でもナスターシャ・キンスキーの登場を最大限引き立たせるため、

一番ビビッドな「赤」を使う。

しかも素材は、優れた光沢を持つモヘアなのだから、

監督の意図ははっきりしてますよね。


キナリノ読者のみなさんは、あまり選ばないタイプのニットだと思いますが、

本作を観たら、意外と真似したくなるかも。

それほどに魅力的なワンシーンであることは間違いありません。

髪型だってブロンドボブにしたくなるかもしれませんよ 笑


何はともあれ、本格的な冬じたくをはじめる前に

ぜひ一度、ご覧になってくださいね。

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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