日本の三大巨匠「クロサワ、オヅ、ミゾグチ」。
世界の映画ファンを魅了した彼らは、海外の人からすると
「日本人で映画好きなら必ず観てるよね」となりがちですが、
実際はそんなことないですよね。
ぼく自身も19歳で映画好きになってから、
彼らの作品デビューまでは5年ほどかかりました。
知ってはいたけど、どこか今さら感があったし(でも同時代の海外ものなら観るという不思議)、
"巨匠"や"名作"というワードが与える重厚感も鑑賞欲を奪っていたように思います。
同じような理由でデビューできてない人も実際に結構いるのですが、
そんな人へ毎回オススメしてきたのが、ミゾグチの『祇園囃子』。
"京都+かわいい女子"というパワーワードがありつつ、
本作最大の見どころは"着物"です。ぼくの知る限り、
映画史上最強の着物映画じゃないかなあ。物語はこんな感じです。
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古くから文人たちに親しまれた日本の代表的花街、京都の祇園町。
この街では名の知れた芸妓・美代春のもとに、
母を亡くしたばかりの少女・栄子が舞妓志願にやってきた。
栄子の熱意に負けた美代春は、彼女を引き受けることに。
やがて、1年間の舞妓修行を経て、初めて店に出た栄子。
ほどなく大会社の御曹司・楠田に見初められる。
一方、美代春も楠田の取引先である神崎から言い寄られるのだったが…
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このように、ひとりの女性が芸妓から舞妓へと成長する物語になっているため、
お稽古などの精進シーンでは浴衣、お座敷では高級着物と
ヴァリエーション豊かな着物を楽しむことができます。
柄だけとっても、白地に「蝶」模様、紺地に「萩の葉」、
鹿子染めに「菊」だったりと、さまざま。
帯使いも定番のお太鼓結びだけじゃなく、カジュアルなときだってあるし、
髪型はアップやダウン、おさげのときもあれば、
美容院で付け毛を入れ、髪を膨らませて、
日本髪を結ってもらうシーンまであったりするのです。
すごくないですか。
そう、まるで着物のファッションショー。
とびきりキュートな"あやや"こと20歳の若尾文子が着せ替え人形のように、
さまざまなスタイルで着物を楽しませてくれる作品になっているのです。
原節子、山本富士子、高峰秀子など、
他にも観てもらい着物美人はたくさんいますが、
まずは『祇園囃子』の若尾文子から。
そして「クロサワ、オヅ、ミゾグチ」映画には、
物語以外にも、日本の伝統文化やライフスタイルなど、
完璧主義者ゆえのこだわりが多数散りばめられているので、
そんなところも注目して観てもらえたらと思います。
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『祇園囃子』
DVD 2,800円(税抜)
発売・販売元:KADOKAWA
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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