キノ・イグルーの週末シネマ​ no.264
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クリクリのいた夏|今夜はこの映画で心地よい眠りにつきましょう

文:キノ・イグルー 有坂塁

クリクリのいた夏|監督:ジャン・ベッケル(1999年・フランス)

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2022年07月08日作成



突然ですが。

みなさんヤクルト1000って飲まれたでしょうか。


睡眠に不安を抱える人たちを中心に人気だというこちらの商品は、

日テレ『しゃべくり007』でマツコ・デラックスさんが、

「あれ飲んでから、すごい眠りが良くなった。すごい、もうびっくり」

と愛飲していることを告白し、以降売り切れ続出。

僕自身も購入できた試しがありません。

この一件で明るみになったのが、日本人の"睡眠の質"問題。

どうやら、みなさん安眠できていないようで。


僕自身もそうですが、

寝る直前までSNSをチェックしていれば(またはゲーム)、

それは結構なストレスになるでしょう。

心を落ち着かせたい時間に、情報の洪水を浴びているわけですからね。

脳が処理しきれないほどのスピード感で。

どう考えたって、いいことはありません。


寝る前は、準備が大切なので、

もし"映画"を観るにしても、ここは入念に選びたいところ。

刺激の強いアクションやホラーは論外ですが、

『いぬのえいが』や『パリ、ジュテーム』といった

オムニバス映画も気をつけてください。

1本は短くとも、個性的なショートムービーが立て続けに7〜8本上映されると、

やはり脳はヘトヘトになってしまいます。

(これは、お酒を飲む前に観るのがいいでしょう)


そこで今回は、心地よい眠りに誘ってくれる癒し系映画として、

2000年代のミニシアター作品を代表する一本で、

ハートウォーミングなフランス映画『クリクリのいた夏』を紹介したいと思います。


まずは、内容からご確認ください。


***


1930年代初頭、フランス。

とある田舎のマレ(沼地)のほとりに流れて住み着いた復員兵のガリスは、

隣人で変わり者のリトン一家を助けながら穏やかで気ままな生活を送っていた。

特にリトン家の末娘クリクリはガリスのことが大好きで、

彼にすっかり懐いていた。

ガリスが交流するちょっと風変わり、けれども自由に生きている人たち。

貧しくても豊かな生活。

それは永遠に思えた時間だったが、少しずつ時代は変わっていくのだった…


***


このように、物語自体はシンプルです。

ひと言でいえば、

フランスの片田舎に暮らす愛らしい人たちの日々を綴った人間賛歌、

という感じでしょうか。


そんな作品をスペシャルなものにしているのは、

何といってもその素敵な暮らしぶりです。

豊かな自然の中で、スズランの花や食用カエル、エスカルゴを捕っては街で売る。

自給自足の満ち足りた生活。


気分が良ければ昼からワインを飲んだりと、まさにその日暮らし。

時間はゆったりと過ぎ、人と人のふれあいは限りなく温かいという、

理想的な生活が描かれています。


「自由とは好きに使える時間を持つことだ。

何をするか、何をしないか、それは、自分が決めること。」

この素敵なセリフに『クリクリのいた夏』の本質があらわれているように思えます。


そんな共感性の高い内容から、

本国フランスでは200万人を動員し、大ヒットを記録。

日本での公開は、渋谷のBunkamura ル・シネマでしたが、

やはりロングラン上映され、20年以上たった今でも

静かにファンを増やしている隠れた名作です。


終わり方も良く、余韻も味わい深いので、

きっと、心地よい眠りに誘ってくれるはず。

お気に入りのワインとともに、お楽しみください。


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『クリクリのいた夏』
Blu-ray¥5,280(税込)
DVD¥4,180(税込)
発売元:アイ・ヴィー・シー

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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