個人的な話になって恐縮ですが、
ぼくは21歳までサッカー漬けの生活を送っていました。
いわゆる、ゴリゴリの体育会というやつです。
でも残念ながら、プロになる夢は叶わず、
その後の人生をまったくの畑違い"映画"へと自らの意思でシフトしました。
この辺りの詳細は、話すと長くなるので、別の機会に。
そこからいろいろな変化が起こりました。
中でも友人のタイプが劇的に変わった。
目立つことが大好きなタイプから、内側に熱いものを秘めた人たちへ。
フィーリング的には後者の人たちの方が安心して自分らしくいられるので、
望んでそういう環境にしたとも言えるかもしれません。
自分の性格も、より一層穏やかになった気がします。
でも不思議なもので、昔の友だちに会うと、
一秒であの頃に戻ってしまうんですね。
もう絶対しないと思っていたバカ騒ぎまで、当たり前のようにしてしまう。
失ったはずの体育会的な要素が、
ぐわゎゎーっ!!と細胞レベルで溢れ出てくるのです。
そして、こういった心境はどうやらぼくだけではなかったということを、
のちに知ることになります。
2011年、韓国で大ヒットした『サニー 永遠の仲間たち』という映画に出会ったからです。
***
完璧な夫と高校生の娘に恵まれ、不自由のない生活を送っていた主婦のナミ。
ある日、母の入院先で、高校時代の友人チュナと再会する。
当時、ソウルの女子高へ転校してきたナミを、
姉御肌のチュナが仲間に入れてくれたのだった。
個性豊かな7人のメンバーは、友情の証としてグループを"サニー"と名付け、
いつも笑い合っていた。
あの事件が起きるまでは…。
あれから25年。偶然の再会を果たしたチュナは
余命2ヵ月の重い病に侵されていた。
「死ぬ前にもう一度みんなに会いたい」と心から願うチュナのため、
ナミは残りのメンバーを捜し始める。
それはナミにとって、輝いていた日々を取り戻し、
再び人生の主役になる旅でもあった。
***
監督のカン・ヒョンチョルは、この誰もが共感できそうな物語を、
笑いあり、涙ありの大エンターテイメントとして描きます。
まるでインド映画のように。
ぼくは、ベタすぎる演出や物語に若干引いてしまうタチなのですが、
本作の場合はそれが一切ありませんでした。
ちゃんと泣けたし、ちゃんと笑えた。
頭ではなく、素直な心で楽しむことができたのです。
これ、2回目を観るとわかるんですけど、力技で泣かしにかかっているように見えて、
じつはとても緻密に計算して作っているんですね。
カット割りや小道具、シンディ・ローパーの楽曲など、
ディテールにこだわり抜いて、それを徹底的に積み重ねている。
だからこそ観ている側は、125分もの間、
ストーリーの中に留まり続けることができるわけです。
ぼくは本作を観たあと、
10年近く会っていなかったサッカー部の先輩に連絡を取りました。
それほど、誰かに会いたくなるような映画なのです。
もし気に入ったら、日本版のリメイクも観てみてくださいね。
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『サニー 永遠の仲間たち デラックス・エディション』
DVD 3,800円+税
Blu-ray 4,700円+税
好評発売中
発売元:ミッドシップ
販売元:TCエンタテインメント
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映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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