思わず通いたくなる関西のミニシアター
世界中には、多くの人に知られていない映画がたくさんあります。大量生産の時間のサイクルの中で、埋もれてしまっている素晴らしい映画があるとしたら、もったいない話です。「映画の未来」のためにも、志あるミニシアターには頑張ってもらいたいですね。
ミニシアターは、「映画を見る場所」であるとともに「映画を育てる場所」でもあるのです。
大阪
シネ・ヌーヴォ
その昔、映画、演劇の中心地でもあった大阪九条。今はそんな面影もなくのどかな雰囲気のこの土地に、1997年、「シネ・ヌーヴォ」は開館しました。ちょっとアングラで独特な雰囲気を醸し出しています。
大阪を拠点に活動を続ける劇団「維新派」が内装を手掛けたそうで、館内のシアター天井には、きらきらと輝くシャンデリアがあります。映画はもちろん、シチュエーションも含めて印象に残りそうですね。
プラネットプラスワン
大阪北区中崎町、古い長屋が今でも残るノスタルジックな路地裏に、カフェやクラフト、アート関連のお店が立ち並ぶこのエリアは、最近、若者たちに人気のエリアでもあります。
この土地にひっそり存在するミニシアター「プラネットプラスワン」。黄色の壁がユニークなビルの2階にある小さな上映室で活動を続けています。
映写室のような雰囲気の小さな上映室。ここには、本当の映画好き達、もしくは映画をもっと知りたいという人達が集まってくるような気配が漂っています。
プラネットプラスワンの売りはとにかく上映企画。映画発明者のリュミエール兄弟やフィルムノワールなど、本当の意味でのクラシックな作品から、現代のインディペンデントな作品まで、カバーする範囲は幅広く、特集の組み方もかなり玄人好みな内容。ここに足繁く通えば、きっとかなりの映画通になるはずです。
シネマート心斎橋
「シネマート心斎橋」は、大阪のアメリカ村の複合商業施設「心斎橋BIGSTEP」の4階にあります。1993年に「パラダイスシネマ」として開館し、2006年に「シネマート心斎橋」としてリニューアルオープンしました。パラダイスシネマではアート系の映画を中心としたセレクトでしたが、シネマート心斎橋になってからは韓国を中心に、大手シネコンでは上映されないであろう“フィリピン”や“ベトナム”などのアジアの良質な映画を観ることができ、欧米にも負けないアジアの映画の力が感じられます。
シネ リーブル梅田
第七藝術劇場
京都
京都シネマ
兵庫(神戸・尼崎)
元町映画館
神戸の繁華街、元町商店街にある「元町映画館」。商店街の場の雰囲気と程よく調和しているので、道行く人もふと立ち止まって、チラシを手にとってみたり、映画を普段の生活の中で身近に感じさせるように工夫されています。「元町映画館」は、神戸の映画文化を盛り上げようと、映画愛好団体・神戸映画サークル協議会の面々などがサポートし、2010年に開館したミニシアター。数名の従業員の他、たくさんのボランティアによって運営されているそうです。2013年上映した映画のフライヤーを集めてみると、壮観です!元町映画館では、新旧、洋画、邦画問わず、「今、1番映画館で見たい映画」という視点で上映映画をセレクトしています。
神戸アートビレッジセンター KAVC CINEMA
神戸新開地にある神戸アートビレッジセンター。演劇や音楽、ダンスなど多目的に使えるホール、アートの展示を行えるギャラリー、レンタルスペースなど、文化的に多角的な活動を許容してくれる施設です。こちらの地下1階に「KAVC CINEMA」として存在するミニシアター。世界の名作、話題の新作、ドキュメンタリー、アニメーション等々から独自の視点で選んだ作品を年間100本程度上映しています。
KAVCキネマでは「えいがのみかた」と題して、映画製作や映画に関わるテーマで定期的にワークショップを行っています。毎回テーマや趣向を変えて、参加者を楽しませてくれます。他にも世界的なアーティスティックなイベントが行われ、神戸アートビレッジセンターならではな気がします。
シネ・リーブル神戸
歴史を感じる重厚な雰囲気と高層ビルの近代的なスタイリッシュさ、両極端にある建物が一つになった「神戸朝日ビル」のB1階に「シネ・リーブル神戸」はあります。製作国にはこだわらず、ドキュメンタリーやコメディ、社会派まで揃った、幅広いラインナップが特徴です。
館内のディスプレイにも力を入れています。「プレス」というスタッフ手作りの映画記事があったり、通路には映画のポスターが上映順に、スタッフのおすすめコメントと一緒に飾ってあります。こういった大手シネコンにはない手作り感から“映画愛”を感じられるのって心が温まりますよね。それぞれ見応えばっちりのディスプレイ、訪れた際には映画と一緒にたっぷりとご堪能ください。
塚口サンサン劇場
尼崎市の塚口さんさんタウン1番館にある「塚口サンサン劇場」は、現在では珍しい個人経営の映画館です。その歴史は古く、1953年に「塚口劇場」として開館した老舗で、1978年に「塚口サンサン劇場」としてリニューアルオープンしました。ミニシアターではありながら、ハリウッド映画やアニメなども厳選して取り上げています。こちらの劇場は“音”へのこだわり抜きには語れません。「特別音響上映」は県外からも多くの人が訪れるほどの人気ぶり。臨場感のある音響は、ダイナミックさや迫力がより増して、なおかつ普段は気付くことのない音のニュアンスにも気づかされます。
また、「君の名は。」のときには前作「言の葉の庭」を一緒に上映するなど、映画ファンの心に寄り添ったセレクトも魅力。「この世界の片隅に」を上映したときには、映画に登場する“楠公飯”からインスピレーションを得て、「ポノポノ食堂」と一緒に作り上げた『楠公飯プリン』を販売するなど、映画をいろんな視点から楽しめる工夫がなされた映画館です。
ミニシアターの良質な映画に会いに行こう
それぞれ個性的な関西のミニシアター。どのミニシアターもただ映画を紹介するだけでなく、映画と観客の関係がより深くなるよう様々な工夫を凝らしています。
私たち観客が映画を心から楽しみ、「また映画館で本当におもしろい映画に出会いたい」という気持ちが連鎖すれば、映画業界全体がきっともっと盛り上がっていくはず。関西のミニシアターにも息の長い活動を続けてもらいたいですね!
映画館は夢の世界を堪能できる場所...ウッディ・アレンの映画「カイロの紫のバラ」。主人公(ミア・ファロー)が現実から逃げるように映画館に足繁く通い、そこで夢と現実が交差します。
これはあくまで映画の世界だけど、やっぱり映画館って特別な場所ですよね。