ベストセラー作家フランソワーズ・サガンの代表作とは露知らず。
ただただ、ジーン・セバーグに会いたい!
というミーハー心のみで鑑賞した映画『悲しみよこんにちは』。
ヌーヴェルヴァーグ前夜、1957年に製作された作品ということで、
彼女が伝説となった『勝手にしやがれ』(1959) よりも前の姿が拝める貴重な作品。
そんな映画が存在するってわかったときは興奮したなぁ~
すぐさまレンタルショップにダッシュしたことを、
昨日のことのように覚えています。
南フランスのリビエラにある別荘で、17歳の夏を迎えたセシルの青春ストーリー。
かの有名な"セシルカット"は、
本作のベリーショートヘアから命名されました。
そのセバーグの美しさをさらに引き立てるのが
おしゃれなサマースタイルのファッション。
ボーダーのカットソーに、クロップドパンツ。
ブロックチェックのワンピース。
ジュエリーはカルティエにエルメスと、まるでファッションショー!
中でも、ジバンシーが手がけた黒ドレスを着たセバーグは、これぞ美の極み。
ゴダールが惚れ込んだのも納得の美しさなのです。
同様に、アンニュイなムード漂うストーリーにも魅了され、
そこで初めてフランソワーズ・サガンという存在を知りました。
この小説を書いたとき、彼女はなんと18歳!
しかもそのデビュー作で、いきなり世界的ベストセラーになってしまうのだから、
規格外すぎて、びっくり仰天です。
どんな環境で生まれ育てば、こんなものが書けるのか。
その答えを教えてくれる映画こそが、『サガン -悲しみよ こんにちは-』。
彼女の波乱万丈な人生をザッと要約すると、こんな感じとなっています。
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デビュー作『悲しみよ こんにちは』が世界的ベストセラーになり、
わずか18歳で有り余る富と名声を手に入れたサガン。
しかし、作品以上に注目されたのは、サガン本人のスキャンダラスな人生だった。
ゴシップ誌を賑わすセレブなパーティとギャンプルの日々。
生死をさまよった交通事故。
「破滅するのは私の自由」と発言して大騒動になったドラッグでの有罪判決。
ミッテラン元大統領との親密な交際…
自由奔放に愛を求めて生きたサガン。
その人生こそが小説にも勝る最高傑作だった。
***
どうです?
サラッと紹介しただけでも、
絵に描いたような刺激的な人生だったことがわかると思います。
弱冠18歳で富と名誉を手にすることの怖さ。
孤独を恐れているのに、自ら破滅へと向かってしまうパーソナリティ。
明るく天真爛漫な姿の裏には、
本人も認めたくないであろう、大きな孤独と虚無感が潜んでいることが、
この映画を観ているとよくわかります。
しかしそれでも彼女は、
身を削るようにしながらも、真摯に、小説を書き続けるのです。
誰かの人生を否定するのは簡単ですが、
その人生があったからこそ生みだされた作品がある。
作品を賞賛するなら、その人の人生も肯定してあげないと。
サガンの人生を追体験すると、
つい、そんな気持ちにもさせられます。
「定義したら、それはもう自由じゃない」
「記憶は空想と同じくらい嘘つきよ。まじめなたたずまいがあるから、空想よりずっと危険だわ」
そんな名言の数々もお楽しみいただける『サガン -悲しみよ こんにちは-』。
ぜひ、ジーン・セバーグの『悲しみよこんにちは』(1957) との2本立てで、
気高くも繊細なサガンの世界をご堪能いただけたらと思います。
( ①『悲しみよこんにちは』→ ②『サガン -悲しみよ こんにちは-』の順番で!)
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『サガン -悲しみよ こんにちは-』
DVD 4,700円(税抜)
発売元:アスミック・エース
販売元:KADOKAWA
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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