どの時代にも素敵なラブストーリーは、存在しています。
ラブコメの元祖と言われる『或る夜の出来事』(1934)、
オードリー・ヘップバーン不朽の名作『ローマの休日』(1953)、
リチャード・ギア×ジュリア・ロバーツのロマコメ『プリティ・ウーマン』(1990)、
19人の男女が織りなす恋愛模様を描いた『ラブ・アクチュアリー』(2003) 、
終わった恋の思い出を奇想天外な手法でたどる『エターナル・サンシャイン』など、
ひと口にラブストーリーと言っても、
ありとあらゆるタイプの作品が映画史の中で誕生しています。
その120年の歴史の中でも、
特別な位置を占めているのが「ビフォア・シリーズ」です。
これはある意味、"発明"だと思います。
1995年の第1弾『ビフォア・サンライズ』、
2004年の第2弾『ビフォア・サンセット』、
2013年の第3弾『ビフォア・ミッドナイト』と、
主人公の年齢に合わせて、20代、30代、40代が抱える悩みが、
18年というリアルな時の経過とともに描かれています。
すべて同じキャスト、同じ監督で。すごくないですか?壮大すぎます。
今回ご紹介するのは、第2作目の『ビフォア・サンセット』。
こちらは前作で、出会い、別れた2人の"再会"から始まる物語となっています。
こんな内容。
***
ジェシーとセリーヌがウィーンでの別れ際に約束した
半年後の再会が果たされぬまま、9年もの歳月が流れていた。
だが、作家となったジェシーが新著のプロモーションのために訪れたパリの書店で、
2人は遂に再会を果たす。
喜ぶ彼らに与えられた時間は、
ジェシーがニューヨーク行きの飛行機に乗るまでの85分間しかなかった。
9年間の空白をわずかな時間で埋め合わせようとする2人は
それぞれの胸の内を語り合っていくが…
***
1度しか会ったことのない"運命"の人と、
9年ぶりに再会できたにも関わらず、85分しか時間がない。
なんとロマンティックな設定!
でも本作は、2人がパリの街を散歩しながらひたすら語り合うだけ。
事件すら発生しません。
30代ならではの知的でウイットに富んだ会話が、
途切れることなくスムーズに続くだけなのに、めちゃくちゃ面白いんです。
男女の関係を、きれいごとにしないで見せてくれる。
だからこそ、観客は時間とともに思い入れが強くなり、共感し、
やがて2人のことが好きになるのだと思います。
と同時に本作は、
パリにショートトリップしたような気分まで味わえてしまうのです。
老舗書店「シェイクスピア・アンド・カンパニー」、
11区の「LE PURE CAFE」、リヨンの庭園「Promenade Plantee」、
そしてセーヌ河でのクルージングと、
リアルタイムでパリを散歩している気分に浸れるので、
外出自粛のいま観るのにもピッタリかもしれません。
再会にときめく、恋愛映画の金字塔。
ワイン片手に、ゆっくりとお楽しみください。
************************************************
『ビフォア・サンセット』
DVD 1,429円+税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 2010 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
※バックナンバー 2017年7月28日にて、「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離<ディスタンス>」を紹介しています。こちらも併せてご覧ください。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
Instagram Web Site