毎日立ち寄るほどに、本屋が好きです。
原体験は何かな?と記憶をさかのぼってみると、
幼少期の"街の本屋"がきっかけだということに、
今さらながら気がつきました。
練馬区春日町にある「文化堂書店」。
そう、"あった"ではなく、今でも"ある"んです!
すごーい!!
1971年開業なので、現在52年目。
ということは、
僕が通い始めた頃ってまだ10年目ぐらいだったんですね。
間口が狭く、奥行きのある細長い空間に、
雑誌、文庫、コミックが天井までぎっしり積まれています。
入り口の雑多な感じも含め、いかにも「街の本屋」という佇まい。
そこから徒歩3分圏内に住んでいた僕は、
おこづかいを握りしめ、「コロコロコミック」や
「キャプテン翼」を買ったり、
目的なしにフラッと棚を覗きに行ったりと、
頻繁にそのお店を訪れていたのです。
(数年前に行ったとき、当時の女性店主がまだ現役でいらっしゃって大感激!)
あれから30年。
こうして毎日のように大型書店や独立系書店へ足を運んでいるのは、
そもそも「文化堂書店」が "本に囲まれること" の楽しさを教えてくれたから。
おかげで、僕の人生はとても彩り豊かなものになりました。
あらためて、文化堂書店の店主ありがとうございます。
ということで今回は、
本への愛情がぎゅっと詰まった『森崎書店の日々』をご紹介したいと思います。
2010年の日本映画で、
モデルとしても活躍する菊池亜希子さんが主演のハートフルドラマです。
まずは内容からご確認ください。
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失恋の痛手から会社を辞め、ひたすら眠って毎日をやり過ごしていた貴子は、
神保町で古書専門の森崎書店を経営する叔父のサトルに誘われ、
小さな書店の2階で暮らし始める。
ふさぎ込みがちな自分を何くれとなく気遣い励ましてくれるサトルや
ユニークな常連客、近所の喫茶店で働くトモコらと触れ合う
うちに、生まれて初めて貴子は本の世界に引き込まれてゆく。
そして、最低最悪の失恋に決着をつける時がやってくる。
***
この映画の舞台は、世界一の古書店街として知られる神田神保町。
書店だけでも約200店あり、そのうちの110店近くが古書店という、
まさに、本好きにとって"聖地"と呼んでもいいエリアでしょう。
(コロナの影響で、数に変動はあるかもしれません)
都内の古書の約三分の一は、この地域に集約されているというから驚きです。
古い印刷紙の香りが立ち込めてそうな空間や、
古本の紙と紙とが擦れあう音、
珈琲を飲みながら本と一緒に過ごす時間など、
本への愛情を感じる場面がたくさん登場する本作ですが、
そもそも主人公・貴子は、最初、まったく本に興味がないんですね。
でも店番中やることもないし、と本を読む。
目をつぶって、目の前に積み上げられた古本の背表紙を指でなぞりながら、
その日に読む本を決めます。
運任せに、当てずっぽうで。
そして、徐々に本の魅力にとりつかれていくのです。
インターネットや電子書籍に親しんで育った若い世代が、
とまどいながら"本"と出会うこの場面は、
歴史ある本そのものへの強いリスペクトを感じる、名シーンになります。
そして。
本の世界を描いているだけあって、素敵なセリフもたくさん!
「本というのは、開くまでは静かだけど、
開いてしまうととてつもない世界が広がっている。
閉じるとまた静かになるんだ。」
こちらなんて、今すぐに本が読みたくなる、
ブックラバーの人にしか紡ぐことの出来ない言葉ですよね。
彼女が働くことになった古書店も、
僕が通った「文化堂書店」のように、
こじんまりとした素敵な空間ですが、
詳しくは本編を観てからのお楽しみ、ということにしておきましょう。
長い人生、立ち止まる時期もあっていい。
心が動いた方は、早速この週末にでもご覧になってみてください。
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『森崎書店の日々』
DVD 4,180円(税込)
発売・販売元:バンダイナムコフィルムワークス
(c)2010 千代田区/『森崎書店の日々』製作委員会
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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