やっぱり憧れてしまう、マイガーデン。
庭木、果樹の周りなどに、花々やハーブを植えてみたり、
蝶や小鳥たちも集まってくる大きな庭。
そんな自然に囲まれた環境で
ポカポカと時間を忘れてぼーっとしたいと妄想を抱いてしまうのは、
僕だけではないはず。
実際に僕の友人は、庭を求め、地方へと移住しました。
きっかけは、映画『人生フルーツ』。
愛知県春日井市にある雑木林に囲まれた一軒の平屋。
そこにお住まいの素敵な老夫婦の姿を観て、彼は一瞬にして心を決めたとか。
「一回きりの人生、僕も理想の暮らしを追い求めてみます」という言葉を残し、
彼は家族とともに旅立っていきました。
この『人生フルーツ』は、ソフト化や配信は一切されていないため、
いますぐ観ることは出来ません。
ときどき開催されるリバイバル上映の際にご覧になってみてください。
今回、僕がご紹介したい作品は『ベニシアさんの四季の庭』です。
山里で自然と共に暮らすベニシアさんを主人公にした、
目にも心にも優しいドキュメンタリー作品。上映時間は98分。
内容は、こんな感じとなっております。
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京都・大原、築百年以上の古民家に暮らす
イギリス人女性ベニシア・スタンリー・スミスさん。
伝統ある英国貴族の家系に生まれるも
華やかな社交界に心満たされることがなかったベニシアさんは、
19歳で世界を放浪する旅に出ます。
運命に導かれるようにたどり着いたのが、大原の山裾に佇む古民家でした。
そんなベニシアさんの暮らしを追った、
NHK放送番組「猫のしっぽカエルの手 京都 大原 ベニシアの手づくり暮らし」をきっかけに、
ベニシアさんと夫の正さんをはじめとする家族や大原の仲間たちが繰り広げる
"手作りで丁寧な生活"は多くの人を魅了しています。
***
上にも書いたとおり、ベニシアさんは英国貴族の家系に生まれながら、
自らの意思を持って環境を変え、ゆったりと丁寧な暮らしを楽しんでいます。
そんな彼女のライフストーリーは、同じフィールドで語られることの多い、
ターシャ・テューダーとも静かにシンクロします。
ターシャさんはボストンの名家に生まれたものの、子ども4人を抱えて離婚。
養育費も払わない前夫を頼らず、シングルマザーとして子どもを育て上げます。
そして、50代半ばで広大な土地を買って、あの理想郷を作り上げました。
まさに波乱万丈の人生。
じつはベニシアさんも、負けず劣らずドラマティックな人生を送られています。
詳しい内容は本編を見てください。
でも彼女は、負けませんでした。
折れることなく、健やかで豊かで、前向きであろうとしました。
その心のしなやかさも、本作で垣間見ることができます。
ベニシアさんが暮らすのは、築100年の古民家。
その庭で、100種類以上ものハーブや花を育てています。
ローズマリー、バジル、ミント、ラベンダー…
ハーブ使いが得意な彼女は、ラベンダーでワックスを作って家中を磨いたり、
ローズマリーで飲み物を作ったりと、
観客が参考にできるアイデアをたくさん教えてくれます。
本物のイングリッシュガーデンと呼ぶに相応しい美しい庭の映像とともに。
庭を育てるということは、
毎日草を抜き、だめになった花を少しずつ取ったりと、
そういう手間を惜しまないということ。
その時間を、慈しむように過ごすベニシアさん。
ステイホームの時間が長くなっているからこそ、
自然の恵みの中に息づく丁寧な生活が、心に染みます。
そして。
広い庭への憧れは募るばかりです。
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『ベニシアさんの四季の庭』
DVD 4,054円(税込)
DVD&Blu-ray 発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
©ベニシア四季の庭製作委員会2013
※2021年9月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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