キノ・イグルーの週末シネマ​ no.248
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恋するマドリ|楽しみ?それとも不安?引越しにまつわる物語

文:キノ・イグルー 有坂塁

恋するマドリ|監督・脚本:大九明子(2007年・日本)

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2022年03月18日作成



僕が吉祥寺へ引っ越した日は、

まったくもって嘘みたいな話ですが、2011年3月11日でした。

まさに、あの当日に。


引越し業者は使わず、僕と奥さん、

手伝いに来てくれた両親との4人で作業を終えたあと、

それは起こりました。


近くのレストランで、遅めのランチ。

僕は始まったばかりの新生活にワクワクを抑えきれず、

ニコニコニコニコしていたのですが、

次の瞬間、とんでもないリアルが襲ってきました。


14時46分18秒。


あまりの感情の振れ幅に思考が停止。

一瞬戸惑いはしましたが、すぐに平静を取り戻して、

今後はできることを粛々と行おう、そう心に決めたことを覚えています。

と同時に、この日に引っ越したことには、

きっと大きな意味があるんだろうとも。


そんなエピソードから始まった吉祥寺ライフでしたが、

11年経ったいまも変わることなく続いております。

(マンション内での引っ越しは、一度ありました)


知り合いも増え、行きつけの飲み屋もでき、

子どもが生まれたことで井の頭公園の価値はさらに急上昇。

他所への引っ越しなんて微塵も考えたことがないほど、

吉祥寺という街が気に入ってしまいました。

便利なだけでなく、街のフィーリングがすごく合う。


そして今回の映画も、

まさに"引っ越しから始まる物語"を描いた作品になります。

ガッキーこと新垣結衣さんの記念すべき初主演作『恋するマドリ』。


まずは、ストーリーからご確認ください。


***


はじめての一人暮らしをすることになった

美大生のユイに素敵な出逢いが訪れる。

元の部屋に忘れ物を取りに行くと、

新しい住人は大人のカッコイイ女性=アツコ。
しかも彼女の元の部屋はユイの新居と判明し、運命的な関係に。

そしてもう一人、バイト先で知り合った男性は

ユイのすぐ上の住人=タカシ。

取っ付きにくいところもあったけど

仕事に取り組む姿勢に次第に惹かれていく。

アツコには同姓としての憧れ、タカシには恋心を抱き始めるユイ。

でも、アツコには自分の夢のために別れた恋人がいて、

まだ少しそのことを引きずっている様子。

タカシはタカシで、失踪してしまった恋人がいて、未練たらたら。

しかもそれはユイの部屋の前の住人らしい。前の部屋の住人?

「それって、つまりアツコさん?」

運命的な出逢いは、一転、奇妙な三角関係に…

どうするユイ?


***


ユイが暮らしているマンションは、人気の街・中目黒。

なだけでなく、窓を開け放つと満開の桜が望めるという、

誰もが羨む目黒川沿いの物件になります。

(ということは、ユイの実家はお金持ちで、小さな頃から美術に親しんだから美大へ?)


このはじめての一人暮らしから始まるラブストーリーは、

インテリアショップ「Francfranc」の15周年記念で制作されているため、

恋の物語と同時に"暮らしを見せる"ことに主軸を置いた作品にもなっています。


コーディネートを手がけたのは、

インテリアスタイリストの作原文子さん。

「エル・デコ」や「カーサブルータス」など、

大人のインテリア雑誌で活躍する彼女が、

ターゲット年齢が若干低めの「Francfranc」をどのように表現したか。

作原ファンは気になるところだと思います。


以前何かのインタビューで読んだのですが、

作原さんはスタイリングについて、

「ブランドに価値を置くのではなく、100円と100万円のモノが

心地よく共存できるようなスタイリングが素敵だと思います」

とおっしゃっていました。

そんな彼女の美意識と映画の世界観が、どのように共存したか。

最近引っ越しをされた方や、模様替えをお考えの方、

色彩設計やレイアウト、小物選びなど、

画面の隅々までご覧になっていただければ、

きっと、何か小さなヒントが見つかるはずです。


監督は、こじらせOLの暴走コメディ『勝手にふるえてろ』で

ブレイクを果たした大九 明子(おおく あきこ)。

2020年には、作原さんとの再タッグで『私をくいとめて』も作っているので、

『恋するマドリ』の仕事に一定の満足感があるのだと思います。


美大生の引っ越しにまつわる物語。

ガッキーの初主演作。

どうぞ楽しんで、ご覧になってください。

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『恋するマドリ』
DVD 4,180円(税込)
発売・販売元:バンダイナムコアーツ

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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