僕が吉祥寺へ引っ越した日は、
まったくもって嘘みたいな話ですが、2011年3月11日でした。
まさに、あの当日に。
引越し業者は使わず、僕と奥さん、
手伝いに来てくれた両親との4人で作業を終えたあと、
それは起こりました。
近くのレストランで、遅めのランチ。
僕は始まったばかりの新生活にワクワクを抑えきれず、
ニコニコニコニコしていたのですが、
次の瞬間、とんでもないリアルが襲ってきました。
14時46分18秒。
あまりの感情の振れ幅に思考が停止。
一瞬戸惑いはしましたが、すぐに平静を取り戻して、
今後はできることを粛々と行おう、そう心に決めたことを覚えています。
と同時に、この日に引っ越したことには、
きっと大きな意味があるんだろうとも。
そんなエピソードから始まった吉祥寺ライフでしたが、
11年経ったいまも変わることなく続いております。
(マンション内での引っ越しは、一度ありました)
知り合いも増え、行きつけの飲み屋もでき、
子どもが生まれたことで井の頭公園の価値はさらに急上昇。
他所への引っ越しなんて微塵も考えたことがないほど、
吉祥寺という街が気に入ってしまいました。
便利なだけでなく、街のフィーリングがすごく合う。
そして今回の映画も、
まさに"引っ越しから始まる物語"を描いた作品になります。
ガッキーこと新垣結衣さんの記念すべき初主演作『恋するマドリ』。
まずは、ストーリーからご確認ください。
***
はじめての一人暮らしをすることになった
美大生のユイに素敵な出逢いが訪れる。
元の部屋に忘れ物を取りに行くと、
新しい住人は大人のカッコイイ女性=アツコ。
しかも彼女の元の部屋はユイの新居と判明し、運命的な関係に。
そしてもう一人、バイト先で知り合った男性は
ユイのすぐ上の住人=タカシ。
取っ付きにくいところもあったけど
仕事に取り組む姿勢に次第に惹かれていく。
アツコには同姓としての憧れ、タカシには恋心を抱き始めるユイ。
でも、アツコには自分の夢のために別れた恋人がいて、
まだ少しそのことを引きずっている様子。
タカシはタカシで、失踪してしまった恋人がいて、未練たらたら。
しかもそれはユイの部屋の前の住人らしい。前の部屋の住人?
「それって、つまりアツコさん?」
運命的な出逢いは、一転、奇妙な三角関係に…
どうするユイ?
***
ユイが暮らしているマンションは、人気の街・中目黒。
なだけでなく、窓を開け放つと満開の桜が望めるという、
誰もが羨む目黒川沿いの物件になります。
(ということは、ユイの実家はお金持ちで、小さな頃から美術に親しんだから美大へ?)
このはじめての一人暮らしから始まるラブストーリーは、
インテリアショップ「Francfranc」の15周年記念で制作されているため、
恋の物語と同時に"暮らしを見せる"ことに主軸を置いた作品にもなっています。
コーディネートを手がけたのは、
インテリアスタイリストの作原文子さん。
「エル・デコ」や「カーサブルータス」など、
大人のインテリア雑誌で活躍する彼女が、
ターゲット年齢が若干低めの「Francfranc」をどのように表現したか。
作原ファンは気になるところだと思います。
以前何かのインタビューで読んだのですが、
作原さんはスタイリングについて、
「ブランドに価値を置くのではなく、100円と100万円のモノが
心地よく共存できるようなスタイリングが素敵だと思います」
とおっしゃっていました。
そんな彼女の美意識と映画の世界観が、どのように共存したか。
最近引っ越しをされた方や、模様替えをお考えの方、
色彩設計やレイアウト、小物選びなど、
画面の隅々までご覧になっていただければ、
きっと、何か小さなヒントが見つかるはずです。
監督は、こじらせOLの暴走コメディ『勝手にふるえてろ』で
ブレイクを果たした大九 明子(おおく あきこ)。
2020年には、作原さんとの再タッグで『私をくいとめて』も作っているので、
『恋するマドリ』の仕事に一定の満足感があるのだと思います。
美大生の引っ越しにまつわる物語。
ガッキーの初主演作。
どうぞ楽しんで、ご覧になってください。
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『恋するマドリ』
DVD 4,180円(税込)
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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