先日「キノ・イグルーのニューシネマワンダーランド」
(「月刊手紙舎」内の動画連載)でも話題になった
"スポーツ映画あるある"。
スポーツをテーマにした映画は、
いくら完成度が高くとも、そのプレー自体にぎこちなさを感じてしまったら、
全てが台無しになってしまうという"あるある"。
実際にそのスポーツを嗜んでいた人ほど、
作品評価が厳しくなってしまう悲しい現実が、そこにあるわけです。
僕で言えばサッカーをやっていたので、
三部作もあった『GOAL!』は、本当に観ていて辛かった(笑)
貧しい主人公が成り上がっていくストーリー自体は、
王道感があって好きなのですが、
いかんせんサッカーが下手すぎた!笑
パスやドリブルはぎこちないし、目に見えてオーラがないんです。
彼のチームメイトが、本物のベッカム、ジダン、
ロナウドといったスター選手ばかりだったから、
なおさらだったのでしょう。
つまり、スポーツ映画を楽しみたい場合は、
馴染みのない競技のものほど"純粋"な気持ちで没入できるんだ、
という結論に至った次第。
そこで今回は、僕自身一度もプレー経験のない
"アメフト"をテーマにした作品をご紹介します。
1993年のアメリカ映画『ルディ 涙のウイニングラン』。
まずは内容からご確認ください。
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幼い頃からフットボール選手に憧れていたルディは、
ノートルダム大学の名門チーム"ファイティング・アイリッシュ"で
プレーすることを夢見ていたが、
経済状態と学力不足から進学を諦めてしまう。
しかし、唯一の理解者である親友の死をきっかけに
再び夢に向かっていく決心をする…
***
この通り、本作はアメフトをテーマにしながらも、
ルディという人間の"生き方"そのものにフォーカスした
人間ドラマとなっています。
彼は、生まれながらにして身体が小さく、
兄や友人と遊ぶときも、身体の小ささからバカにされたり、
いじめられることも少なくありませんでした。
でもルディと家族は、みんなアメフトが大好きで。
中でも名門・ノートルダム大学の試合は、欠かさず見るだけでなく、
その熱狂的な試合の実況を演じてしまうほど、
ルディはアメフトにのめりこんでいくのです。
そしてここが、この映画の良さでもあると思います。
競技をメインに据えるのではなく、
誰もが共感できる好きなものへの愛情や、
家族を描いたヒューマンドラマになっている。
そこを入り口にすることで、
観客はルディの身に起こることを自分事として捉えることができ、
感情移入がしやすくなるわけですね。
おまけにこの物語は"実話"がベースになっているので、
胸アツ映画をお探しの方には、
言うことなしな1本となっているのです。
くじけても夢を追いかけ続け、挑戦し続ける姿は絵空事ではありません。
1970年代前後のアメリカで、僕たちと変わらないある若者が、
周囲からバカにされようとも信念を持ち続け、
他人の心を動かしていったひとつの"軌跡"です。
目標に向かってがんばっている人や、
仕事でくじけそうになっている人には、
今すぐにでも観てもらいたいアツい一作。
めちゃくちゃ元気が出るので、この週末にでもぜひ。
アメフト好きの人は、いったいどういう感想を持つんだろう。
聞いてみたいなぁ。
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『ルディ』
デジタル配信中
DVD 1,551円(税込)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©1993 TRISTAR PICTURES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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