みなさん、スペイン映画って何本ぐらい観ているでしょうか?
ヨーロッパ圏でも、フランスやイギリス、イタリアと比較すると、
いまいちメジャー感に欠けると言いますか、
僕の勤めていたレンタルビデオ店でも、
それらの国と比べると、作品数は十分の一程度でした。
どの作品がスペイン映画かわからない、という意見もよく聞きます(僕の友人もそうでした)
ということで、今回は基本情報からチェック!します。
そもそも、1年間でどれだけの作品が作られているのでしょうか?
総務省統計局が発表したデータからご覧ください。
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制作本数(2017年)
1位:インド 1,986本
2位:中国 874本
3位:アメリカ 660本
4位:日本 594本
5位:韓国 494本
6位:フランス 300本
7位:イギリス 285本
8位:スペイン 241本
9位:ドイツ 233本
10位:アルゼンチン 220本
【出典:総務省統計局「世界の統計」2020及び同2021】
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インドは、ダブルスコアでブッチぎりの第1位。ボリウッド強し。
日本は、韓国・フランスを上回っての第4位。
上位3ヶ国は、アメリカで3倍、インド・中国は10倍ほど人口が多いため、
日本は秘かな映画大国だということも、
こちらを見ているとよくわかります(需要と供給のバランスはさておき)
そして、スペインは。
伝統国ドイツや、ランク外のイタリアを上回っての第8位。
これは、大健闘です。
でも年間で241本作られながら、
実際に日本で公開される数は多くても10本前後。少なすぎる!
けど逆にいえば、お宝はまだまだ眠っているわけで、
この辺りのギャップはNetflixやAmazonプライムなどの配信が
今後埋めていってくれるはずです。
そんなスペイン映画界で、新作を作れば、必ず日本で公開される人気監督がいます。
彼の名は、ペドロ・アルモドバル。
1999年に発表された『オール・アバウト・マイ・マザー』では、
アカデミー外国語映画賞も受賞した世界的な監督。
今回は、彼のフィルモグラフィの中でも、
"スペイン"という国をより濃厚に感じることのできる
『ボルベール<帰郷>』をご紹介したいと思います。
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15歳の娘と失業中の夫とマドリードで暮らすライムンダ。
ある日彼女に二つの死が降りかかる。
娘のパウラが義父を台所で刺し殺してしまったのだ。
娘を守るため夫の死体をなんとかしようとする彼女に、
今度は最愛の叔母が亡くなったという知らせが届く。
そしてライムンダは、
故郷ラ・マンチャで数年前に火事で焼死したはずの母の姿を見た、
という噂を耳にする。
生き返ったのか、幽霊なのか。
生前わかりあえず心を閉ざしてしまった母に、今ならすべてを打ち明けられる。
孤独な少女のように、母の愛を求めるライムンダ。
しかし、ついに彼女の前に現れた母には、もっと衝撃的な秘密があった…
***
主役のライムンダを演じるのは、ペネロペ・クルス。
スペイン・マドリード出身ながら、
いまやウディ・アレンから『パイレーツ・オブ・カリビアン / 生命の泉』まで、
幅広いアメリカ映画に出演。映画界を代表するトップスターのひとりです。
彼女演じるライムンダは、スペインの太陽のように情熱的な女性。
頭のてっぺんからつま先まで生活感を感じさせながらも、
本能的で伸びやかな女性らしさも併せ持っていて、
どう見てもラ・マンチャの女にしか見えません。
ラ・マンチャ出身のペドロ・アルモドバル監督は、こう語っています。
「イギリスやドイツといった他のヨーロッパの女優とは決定的に異なる
"地中海的"、"南欧的"な演技が可能な女優がこの作品には必要だった」
そこで白羽の矢が立ったのが、過去にもタッグを組んだことのあるペネロペ。
しかし、彼女は細すぎるという監督の意向で、
じつは、付け尻をつけて演技をしているのだとか。
ペネロペは、
「役作りの上で絶対に必要なことだったし、わたしにとって、
"付け尻" を付けることは、ぴったりな靴を見つけたようなものなの。」
と素敵なコメントを残しています。
強く、やさしく、美しい。
ラ・マンチャのたくましい女たちの生きざまを
郷愁と共に描き出した極上のヒューマンドラマは、
一方で、ヒッチコックもびっくりする捻りの効いたミステリー作品でもあります。
スペイン映画の奥深さを、120分間、心ゆくまでご堪能ください。
そして、もし気に入ったら、次はぜひ『トーク・トゥ・ハー』を!
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『ボルベール<帰郷>』
Blu-ray 2,200円(税込)
発売・販売元:ギャガ
©EL DESEO, D.A, S. L. U. M-50529-2005
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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