キノ・イグルーの週末シネマ​ no.219
ボルベール<帰郷>|心の奥底に響く名作スペイン映のカバー画像

ボルベール<帰郷>|心の奥底に響く名作スペイン映画

文:キノ・イグルー 有坂塁

ボルベール<帰郷>|監督:ペドロ・アルモドバル(2006年・スペイン)

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2021年08月27日作成



みなさん、スペイン映画って何本ぐらい観ているでしょうか?


ヨーロッパ圏でも、フランスやイギリス、イタリアと比較すると、

いまいちメジャー感に欠けると言いますか、

僕の勤めていたレンタルビデオ店でも、

それらの国と比べると、作品数は十分の一程度でした。

どの作品がスペイン映画かわからない、という意見もよく聞きます(僕の友人もそうでした)

ということで、今回は基本情報からチェック!します。

そもそも、1年間でどれだけの作品が作られているのでしょうか?

総務省統計局が発表したデータからご覧ください。


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制作本数(2017年)

1位:インド    1,986本
2位:中国      874本
3位:アメリカ    660本
4位:日本      594本
5位:韓国      494本
6位:フランス    300本
7位:イギリス    285本
8位:スペイン    241本
9位:ドイツ     233本
10位:アルゼンチン  220本

【出典:総務省統計局「世界の統計」2020及び同2021】

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インドは、ダブルスコアでブッチぎりの第1位。ボリウッド強し。

日本は、韓国・フランスを上回っての第4位。

上位3ヶ国は、アメリカで3倍、インド・中国は10倍ほど人口が多いため、

日本は秘かな映画大国だということも、

こちらを見ているとよくわかります(需要と供給のバランスはさておき)


そして、スペインは。

伝統国ドイツや、ランク外のイタリアを上回っての第8位。

これは、大健闘です。

でも年間で241本作られながら、

実際に日本で公開される数は多くても10本前後。少なすぎる!


けど逆にいえば、お宝はまだまだ眠っているわけで、

この辺りのギャップはNetflixやAmazonプライムなどの配信が

今後埋めていってくれるはずです。


そんなスペイン映画界で、新作を作れば、必ず日本で公開される人気監督がいます。

彼の名は、ペドロ・アルモドバル。

1999年に発表された『オール・アバウト・マイ・マザー』では、

アカデミー外国語映画賞も受賞した世界的な監督。

今回は、彼のフィルモグラフィの中でも、

"スペイン"という国をより濃厚に感じることのできる

『ボルベール<帰郷>』をご紹介したいと思います。


***


15歳の娘と失業中の夫とマドリードで暮らすライムンダ。

ある日彼女に二つの死が降りかかる。

娘のパウラが義父を台所で刺し殺してしまったのだ。

娘を守るため夫の死体をなんとかしようとする彼女に、

今度は最愛の叔母が亡くなったという知らせが届く。

そしてライムンダは、

故郷ラ・マンチャで数年前に火事で焼死したはずの母の姿を見た、

という噂を耳にする。

生き返ったのか、幽霊なのか。

生前わかりあえず心を閉ざしてしまった母に、今ならすべてを打ち明けられる。

孤独な少女のように、母の愛を求めるライムンダ。

しかし、ついに彼女の前に現れた母には、もっと衝撃的な秘密があった…


***


主役のライムンダを演じるのは、ペネロペ・クルス。

スペイン・マドリード出身ながら、

いまやウディ・アレンから『パイレーツ・オブ・カリビアン / 生命の泉』まで、

幅広いアメリカ映画に出演。映画界を代表するトップスターのひとりです。


彼女演じるライムンダは、スペインの太陽のように情熱的な女性。

頭のてっぺんからつま先まで生活感を感じさせながらも、

本能的で伸びやかな女性らしさも併せ持っていて、

どう見てもラ・マンチャの女にしか見えません。


ラ・マンチャ出身のペドロ・アルモドバル監督は、こう語っています。

「イギリスやドイツといった他のヨーロッパの女優とは決定的に異なる

"地中海的"、"南欧的"な演技が可能な女優がこの作品には必要だった」


そこで白羽の矢が立ったのが、過去にもタッグを組んだことのあるペネロペ。

しかし、彼女は細すぎるという監督の意向で、

じつは、付け尻をつけて演技をしているのだとか。

ペネロペは、

「役作りの上で絶対に必要なことだったし、わたしにとって、

"付け尻" を付けることは、ぴったりな靴を見つけたようなものなの。」

と素敵なコメントを残しています。


強く、やさしく、美しい。

ラ・マンチャのたくましい女たちの生きざまを

郷愁と共に描き出した極上のヒューマンドラマは、

一方で、ヒッチコックもびっくりする捻りの効いたミステリー作品でもあります。


スペイン映画の奥深さを、120分間、心ゆくまでご堪能ください。

そして、もし気に入ったら、次はぜひ『トーク・トゥ・ハー』を!


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『ボルベール<帰郷>』
Blu-ray 2,200円(税込)
発売・販売元:ギャガ
©EL DESEO, D.A, S. L. U. M-50529-2005

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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