つい先日、思わぬところでブルース・リーと出会いました。
クエンティン・タランティーノの最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のことです。
みなさんはご覧になったでしょうか?
個人的には、ディカプリオ&ブラピという二大スターの魅力を最大限に活かしつつ、
タランティーノ的な映画愛あふれる傑作に仕上げてしまえていることに感動でした。
今年のベスト10入りも間違いなし。
こちらのストーリーは、
1969年に実際に起こったシャロン・テート殺人事件を軸にしているのですが
(普段は予備知識ゼロをおすすめしていますが、本作はぜひこの事件を調べてから観てください!)、
この中でマイ・ヒーローのブルース・リーがさらっと登場するのです。
でもこのブルース・リーがじつに弱い(笑)
さらに口だけ男のように描かれているので、
遺族からクレームは入るわ、ネットは大炎上するわという大騒ぎに発展。
パロディシーンとして考えたら最高で、実際にぼくも大爆笑してしまったわけですが、
ふと、我に返って思うのです。無敵のブルース・リーが観たい、と。
そんなときは、やっぱり『燃えよドラゴン』となるわけです。
***
香港の裏社会に君臨する実力者ハンが主催する武術トーナメントに、
世界中の武術家が招待された。
アメリカのウィリアムズ、ローパーはその招待状を受け取り、香港へ向かう。
一方、少林寺で武術を修行中のリーという若者は、
秘密情報局から、トーナメントに出場し、ハンの麻薬製造密売の内情を探り出す要請を受ける。
一度は断ったものの、修道僧長から、
ハンもかつては少林寺の修行僧であったが、修めた武術の知識を悪用していること、
また父から数年前に姉がハンの手下の犠牲になったことを聞かされ、
秘密情報局からの要請を承諾し、トーナメントの出場を決意する。
そしてリーは秘密の任務と復讐心を胸に秘め、トーナメント会場の島へと向かうのだった…
***
神技のような格闘技、アチョーという雄叫び、鍛えぬいた肉体。
このストイックなブルース・リーのキャラクターは、瞬く間に世界を魅了し、
空前のカンフーブームを巻き起こします。
香港時代の『ドラゴン危機一発』や『ドラゴン怒りの鉄拳』もおもしろいんですけど、
『燃えよドラゴン』をパワープッシュするのはリーの神技が存分に堪能できるから。
ヌンチャク、三連続キック、腕ひしぎ逆十字、フィリピン武術の「カリ」、スタントアクション、
そして血舐め…(自分の血を舐めると、突然強くなる)などなど。
世界中が熱狂したアクションのエッセンスのすべてが、ここに詰まっているのです。
ブルース・リーこそ、地上最強の人間。
そう錯覚してしまうのも、無理がないほど、本作の彼は神懸かっているのです。
(そういえばリーは、截拳道という武術を自ら創始した武術家でもありました)
しかしそんな唯一無二のヒーローは、本作の完成直後、急死してしまいます。
享年32歳。世界中にカンフーブームを巻き起こした張本人は、
そのときすでにこの世には存在していなかったのです。
リーの存在がなかったら、ジャッキー・チェン(リーと闘う端役として出演してます!)も
『マトリックス』もあり得なかったはず。
それほどまでに強い影響力を持った作品が『燃えよドラゴン』なのです。
彼の生涯の目標は、ハリウッド映画に主演することだったそう。
本作はその大きな夢をかなえた一作でもあるのです。
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『燃えよドラゴン』
Blu-ray 2,381円+税
DVD 1,429円+税
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 2019 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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