この数十年、
現実とフィクションの境界線が曖昧になってきている気がします。
「映画みたい!」と形容することが増えたと言いますか。
最近話題になっているトヨタのリアル街づくりプロジェクト
「Woven City」なんて、完全にフィクション寄りですよね。
SF映画の世界観。
ということは。
巷でよく言われる「フィクション映画はウソっぽい」という感覚にも、
何かしら影響が出るのでしょうか。
どんなハチャメチャな設定もリアルに感じてしまうのか、
そもそもウソっぽいという感覚がなくなるのか。
でも、そうなるとフィクション映画の真価ってどうなるんだろう、
とか、考えるだけでワクワクします。
まあ、そんな未来の話はさておき。
2021年3月の時点では、
現実をベースにした"実話モノ"は、変わらず根強い人気があります。
いや、むしろ『ボヘミアン・ラプソディ』や『グレイテスト・ショーマン』の影響で、
製作本数は加速しているようにすら感じる。
中でも"歴史的事件の裏側"を描いた作品は、
事実×ミステリーという掛け合わせが何とも映画的で
昔から人気の高いジャンルのひとつとなっています。
現場で何が起こっていたのか、やっぱり知りたいですよね。
トム・ハンクス主演の『アポロ13』は、
そのジャンルにおいて最高峰の1本だと思います。
あの有名な事故を描いていながら、見せ場たっぷり、
何度観ても楽しめるタイプの"作品"に仕上がっているのです。
あの歴史的事件の裏側では、いったい何が起こっていたのでしょうか?
***
アメリカでは月面着陸に成功したアポロ11号と12号に続き、
13号打ち上げの準備が進められていた。
1970年4月11日、アポロ13号はベテラン宇宙飛行士の船長ジムとフレッド、
代替要員として搭乗したジャックを乗せ、月へ向けて出発する。
しかし月まであと少しの距離に迫った頃、突如として爆発事故が発生してしまう。
絶望的な状況に陥った乗組員たちは、
地上の管制センターと力を合わせて地球への生還を目指す…
***
こういった有名な実話を映画化する難しさは、
観客のほとんどがその結末をすでに知っている、ということ。
それでも映画として、どう面白く、ハラハラドキドキさせられるのか。
そもそもの期待値が高いだけに、作り手の腕が試される題材でもあるのです。
その点において『アポロ13』は、紛れもない傑作!
と断言してよいでしょう。
数多ある"実話モノ"の中でも、ストーリーテリング、映像技術、
役者の演技と、総合力の高さでは群を抜いています。
当時、最先端だったSFXを駆使した打ち上げシーンでは、
あまりの出来映えの良さにNASA関係者が
「よくこんな映像が残っていたな」と勘違いしたほど。
さらに、日本人宇宙飛行士・野口聡一さんも
「再現性が本当に高い」とコメントし、最も好きな宇宙映画として紹介するほど、
関係者の中でも評価の高い逸品なのです。
監督は、『バック・ドラフト』(1991)、『ビューティフル・マインド』(2001)、
『ラッシュ/プライドと友情』(2013)のロン・ハワード。
彼の持ち味は、様々な題材を扱いながらも、
人生を燃やし尽くすような激しい生き方を描き切るところ。
『アポロ13』なんて、まさに極限状態です。
乗組員と管制センターのメンバー全員が懸命に努力をし、
その奮闘と緊張はクライマックスで最高潮を迎えます。
結果は分かっているのに、何度観ても、涙を抑えることができません。
スタンディングオベーションをしたくなる、最高のクライマックスです。
どうぞご期待ください。
約50年前に実際に起こってしまった、絶体絶命のミッション。
その舞台裏、観てみたくないですか?
************************************************
『アポロ13』
Blu-ray 1,886円+税
DVD 1,429円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2021年3月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
Instagram Web Site