映画を観て、その土地へ赴きたくなることがあります。
実際に訪れたこともあります。
これまでで言うと、
『ニュー・シネマ・パラダイス』を観てシチリアの小さな村へ、
またゴダールやトリュフォーなどのヌーヴェルヴァーグの諸作を観て、
パリにも行ってみたりしました。
映画と同じシチュエーションで、脳内スクリーンにて本編が再上映する。
リアルと空想が入り混じったその不思議な時間は、
想像以上に刺激的で「聖地巡礼」という言葉が大流行したことにも
激しく同意してしまいました。
さてそんな「聖地巡礼」の最新版は、2年前の春。
場所は、ぐっと近くなり"京都"です。
作品は、天才・湯浅政明によるアニメーション『夜は短し歩けよ乙女』でした。
***
クラブの後輩である"黒髪の乙女"に思いを寄せる"先輩"は
今日も
「な」るべく
「か」のじょ彼女の
「め」にとまる
よう、ナカメ作戦を実行する日々を送っていた。
空回りし続ける"先輩"と天真爛漫に歩き続ける"乙女"。
京都の街で、個性豊かな仲間達が次々に巻き起こす珍事件に巻き込まれながら、
不思議な夜がどんどん更けてゆく。
外堀を埋めることしかできない"先輩"の思いはどこへ向かうのか!?
***
いますぐにでも京都へ旅立ちたい!
という気持ちが、鑑賞後に抑えられませんでした。
いつかではなく、今すぐ行きたい。
この喚起力たるや、過去に観たどんな京都ムービーより強いものがありました。
鴨川デルタや吉田神社、
ぼくのベスト喫茶のひとつでもある「進々堂」まで登場。
下鴨神社・糺の森でおこなわれている古本市は、
およそ忘れることのできない素晴らしいイメージで表現されています。
しかし何より決定的だったのは、木屋町周辺での飲み歩きの場面でした。
赤玉や電気ブランといった個性派のお酒を浴びるように飲む、
観ているだけでも楽しくなるシーン。
画面を突き破らんばかりのイキイキした湯浅監督の表現力と、
妖しい夜の京都の魅力がぶつかり合って、もう興奮おさまらず!
居てもたってもいられなくなったぼくは、
なんと、翌日に京都へ旅立つこととなりました。
おそらくあなたも、本作を観たあとは、
京都へ行きたくなってしまうこと間違いなしなので、
ぜひその分のスケジュールも確保してから、ご覧になることをおすすめします。
そんな楽しみ方も、乙なものです。
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「夜は短し歩けよ乙女 通常版」
Blu-ray&DVD 発売中
Blu-ray:6,380 円(税抜価格 5,800 円)
DVD:5,280 円(税抜価格 4,800 円)
発売元:東宝/フジテレビ
販売元:東宝
©森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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