人を好きになるって、
理屈ではないですよね?
顔や性格で選んでいるつもりでも、
それだってじつはただのひとつの要素で、
本当はもっと大きな意味でその人のことを好きなはず。
言葉で表現できるわけないんです。
『青いパパイヤの香り』は、そんな言葉を超えた恋愛の瞬間を、
繊細な音と映像で、丁寧に紡いでいきます。
「サイゴンで使用人として働く10歳のムイは、
その家の長男が連れてきた友人クェンに恋心をいだくものの、
何もないまま10年のときが過ぎる。
美しい大人の女性に成長したムイは、長男のすすめで、
音楽家となったクェンの元で使用人として働くことになり…」
というお話なのですが、
全編をとおして、ムイのセリフはほとんどありません。
言葉でなく、ふと見せる表情やしぐさを通して、
彼女の感情を理解していきます。
こんな印象的なシーンがありました。
"ムイは前の女主人からもらったアオザイとネックレスで着飾り、
クェンの婚約者が置き忘れていった口紅を塗っていると、
その姿を帰宅したクェンに見つかってしまう。
あまりの恥ずかしさから、ムイは自室に隠れてしまうのですが、
その日からクェンはムイの美しさが忘れられなくなり、
婚約者との仲がうまくいかなくなる"
このシーンがいいんです。
見つかってしまったときの彼女の恥ずかしそうな姿には、
彼女の魅力とともに、恋の感情が爆発するように溢れ出ていて。
本作の監督は、『ノルウェイの森』でおなじみ、
ベトナム系フランス人のトラン・アン・ユン。
彼は1950年代のサイゴン(現ホーチミン)を映像化するため、
現地ロケではなく、すべてパリ郊外にセットを建てました。
水分をたっぷり含んだ空気の中に沈む色や光を、
絵画のように再現してしまうその手腕には、もはや驚きしかありません。
さらに、家具や調度品など、
映像の隅々までベトナムエッセンスが満載の作品なので、
暮らしのヒントを探している方にもオススメ。
ぜひ、恋と暮らしの参考にしてみてくださいね。
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『青いパパイヤの香り』
DVD 3,800円 (税抜)
Blu-ray 4,700円 (税抜)
発売中
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:ハピネット
(C) 1993 LES PRODUCTION LAZENNEC
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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