新型コロナウイルスの影響とともに、
リモートワークの推進や時差通勤など
「働き方」そのものに変化が起こっていますが、
みなさんもそのような環境になっているでしょうか?
(ぼくは、ほとんどの打ち合わせがZoomに)
そのおかげで、通勤ラッシュからの解放や、
ワークライフバランスの改善など、
ストレスの多かった現代人に多数のメリットを生み出してくれましたが、
一方、1人で仕事をすることのモチベーションに限界を感じる、
という声も、ちらほら、聞こえ始めました。
同僚との何気ない会話や、頑張っている姿を横目に眺める。
こんな当たり前なことが、意識下に、
想像以上の刺激を与えてくれていたようです。
そして、リモートワークの場合は、
自らを奮い立たせるための"アイテム"が必要なのかもしれません。
映画であれば、ぼくは、フィクション性の強い作品をオススメします。
自分と同じように仕事をしている主人公でありながら、
嘘でしょ!っていう何かにチャレンジする、そういうタイプのもの。
いかにも映画的な設定の方が、エンタメとして観られる分、
スカッと、ポジティブになれると思うんです。
そこでオススメしたのが、
ユアン・マクレガー主演のイギリス映画『砂漠でサーモンフィッシング』。
これは、真面目な話にも関わらず、伸びやかで軽やか。
無謀すぎるプロジェクトが、サエない男の人生を変える、
というヤル気スイッチを発動してくれる、
熱いヒューマン・コメディとなっています。
ストーリーは、こんな感じ。
***
砂漠で鮭釣りがしたい―
イエメンの大富豪・シャイフのそんなありえない夢の実現を依頼された、
釣りだけが取り柄の水産学者・ジョーンズ博士。
パートナーとして現れたのは、
頭がよく美人だが恋は苦手などこか不器用なコンサルタント・ハリエット。
バカげた仕事に、不可能! と一蹴したジョーンズ博士だったが、
5000万ポンドの予算がつき、英国首相まで首をつっこみ、
もう後戻りできない国家プロジェクトに発展してしまう!
しかし、シャイフの人柄と真意に魅せられたジョーンズ博士は、
次第に本気になっていく。
ハリエットとの信頼関係も生まれ、数々の困難に立ち向かっていくのだが、
果たして、マトモな大人ならとっくに諦めるムチャな夢物語の行方は―
***
監督は、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』『ギルバート・グレイプ』
『ショコラ』など、ヒューマンドラマの名手として知られるラッセ・ハルストレム。
今回の作品では、
誰もが笑ってしまうような"無謀な挑戦"に挑んだ大人たちの熱いドラマに加え、
その裏で見え隠れする国家の思惑、風刺の効いたブリティッシュ・ジョーク、
さらに博士たちのラブストーリーまでをも盛り込んだストーリーを、
わずか108分で見せ切ってしまうという、力技を発揮しています。
とはいえ、正直ツッコミどころは満載なのですが(笑)、
「んなこと、どうでもいい!」と言いたくなるほど、
不思議な愛おしさに包まれた作品になっているのです。
特に好きなのが、主人公ジョーンズ博士の自発性のなさ。
英国のさかなクンを思わせる彼は、
最初このプロジェクトを「実行不可能である」と断言し、ヤル気もゼロ。
しかし、あの手この手で周りを固められ、
逃げ場がなくなっていくに従い、本気になっていく。
その受け身な姿勢が、何ともいえずいいんですよねえ。
人間的だし、心が自由。
巻き込まれ型タイプでも、
ここまで前向きにがんばれてしまうという姿からは、
勇気をもらえるはずですし、仕事に行き詰まっていれば、なおのこと!
テンポもいいので、サクッと観られるし、
モチベーションアップにはもってこいの一作です。
この週末にでも、ぜひ。
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『砂漠でサーモン・フィッシング』
DVD 1,143円(税抜)
発売中
発売元:ギャガ
© 2011 Yemen Distribution LTD., BBC and The British Film Institute. All Rights Reserved.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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