「お弁当」という言葉だけで、ウキウキしていたこども時代。
給食も楽しいけれど、やっぱり自分のためだけに作ってもらう特別感には叶いません。
まるで宝箱を開けるかのように、お弁当箱のふたを開けるあの瞬間。
時が止まったかのような不思議な時間。
あのときは「大好物のものであってくれ!」と毎回祈っていたけれど、
いま考えると、その色の組み合わせやレイアウトなど、
ある意味"デザイン"としてお弁当を楽しんでいたような気もします。
30人いたら、30通りの"デザイン"があったなんて、
お弁当は文化としても素敵だなー、と今さらながらにと思います
(昨年は「BENTO おべんとう展」なるものも開催されていましたね)
アメリカなら、お弁当箱はLUNCH BOX。
カラフルなプラスティックの容器に、サンドイッチやベーグル、
付け合わせにざく切りしたフルーツなどを入れるのが定番です。
おもしろいのは、インドのお弁当事情。
金属製のダッパーと呼ばれるお弁当箱に、
カレーやナンを入れるまでは想像できると思うのですが、
そのお弁当を自分で持って行かず、
配達人に届けてもらうというからびっくりです。
それが、インドスタイル。
その特殊な環境から生まれたドラマこそが、
今回ご紹介する『めぐり逢わせのお弁当』なのです。
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インド・ムンバイでは、お昼どきともなると、
ダッバーワーラー(弁当配達人)がオフィス街で慌ただしくお弁当を配って歩く。
その中のひとつ、主婦イラが夫の愛情を取り戻すために腕を振るった4段重ねのお弁当が、
なぜか、早期退職を控えた男やもめのサージャンの元に届けられた。
神様のいたずらか、天の啓示か。
偶然の誤配達がめぐり逢わせた女と男。
イラは空っぽのお弁当箱に歓び、サージャンは手料理の味に驚きを覚える。
だが夫の反応はいつもと同じ。
不審に思ったイラは、翌日のお弁当に手紙を忍ばせる…
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このダッバーワーラーというシステムで起こる誤配達の確率は、
なんと、600万個に1個だそう。驚異の成功率。
本作はこの600万分の1のまちがいをベースにした、
映画的で、なんともロマンティックなお話です。
4段重ねのダッパーには、カレー、チャパティ、バスマティライス、
野菜料理が入っています。それらを一回、大皿に取り出して、
カレーとライスを混ぜたり、チャパティで包んだりして食べるのです。
そのどれもが本当においしそうで、観ていてお腹が空くこと間違いなしです。
決して料理上手ではない主人公のイラは、
おばあちゃんのレシピを引っぱり出したり、
近所のおばさんの助言に従ってスパイスを足してみたりと、
自分なりに、一生懸命料理をつくります。
この姿がいいんですね。自分も料理がしたくなる。
もし、お弁当づくりに行き詰まっている方がいたら、
本作を観て、インド式お弁当にチャレンジしてみるなんていいかもしれません。
いや、ぜひともお試しあれ!
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「めぐり逢わせのお弁当」
Blu-ray&DVD 発売中
Blu-ray:5,170 円(税抜価格 4,700 円)
DVD:4,180 円(税抜価格 3,800 円)
発売・販売元:東宝
© AKFPL, ARTE France Cinéma, ASAP Films, Dar Motion Pictures, NFDC,Rohfilm — 2013
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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