リラックスといえば。
先日11月13日に、
1号限定で復活したカルチャー誌「リラックス」(マガジンハウス) は、
みなさんご覧になったでしょうか?
流行に媚びない独自の目線でカルチャーやミュージック、
ファッションなどを取り上げ、
特に岡本仁さんが編集長を務めた2000年からの5年間は、
海外でも評価され、"伝説的"とも評価されたあの雑誌です。
そこで、毎号地味に楽しみにしていたのが2つのキャッチコピー。
今回は、表紙右上のコピーは、"不寛容な時代にリラックス"。
背表紙は、"誰かをフォローするために生まれてきたんじゃないよ。"
当時に比べると、今回のは、メッセージが直接的に感じました。
ズバッと決めにきてるというか。
(これまでは、"公園通りの青春って感じです"や
"終わらないでくれーっ、夏ーっ!"でしたから)
時代の空気を感じ、言葉を紡ぐ。
"リラックス"という枠組みを持った雑誌であっても、
これだけギスギスした世の中では、ふわっとした言い回しよりも、
ダイレクトな言葉の方が、スッと緊張を解いてくれます。
東日本大震災のときもそうでした。
でも、映像はというと。
表現そのものが、視覚や聴覚へと直接訴えかけてくるので、
ダイレクトなアプローチは刺激が強すぎます。
心地よい現実逃避や、日常をゆるーく肯定してくれる。
その方が、癒し効果は高いと思われます。
ということでの、『レンタネコ』。
心寂しい人たちと猫のおはなしは、
ゆったりのんびりした絵本のような作品になっています。
レンタ~ネコ。ネコ、ネコ。
内容は、こんな感じです。
***
都会の一隅にある、平屋の日本家屋。
幼い頃から猫に好かれていたサヨコは、たくさんの猫たちと暮らしながら、
心寂しい人たちと猫を引き合わせていきます。
サヨコから猫を借りるのは年齢も境遇も異なる人々。
夫と愛猫に先立たれた婦人、単身赴任中の中年男、
自分の存在意義に疑問を感じるレンタカー屋の受付嬢、
サヨコと浅からぬ因縁を持ち、今はとある組織から追われる男。
そして、謎の老人の存在。
彼らの心の隙間を埋める瞬間に立ち会いながら、
サヨコにも次第に変化が訪れていきます。
都会の片隅でひっそりと営まれる1軒のレンタネコ屋が、
今日もあなたに"レンタネコ"を届けます。
***
みんな大好き『かもめ食堂』『めがね』の荻上直子監督が指揮をとり、
市川実日子が軽やかに作品世界を彩ります。
ほんわかして、落ち着く。
まどろみの時間、そのもののような映画。
日曜日の午後に見たくなる、そんな1本。
だから、この映画については多くを語りたくありません。
言葉にするほど嘘っぽくなる。
なので、軽く注目ポイントを3つ上げておくことに留めておこうと思います。
まずひとつ目は、
市川実日子の「レンタ~ネコ。ネコ、ネコ」という掛け声。
リヤカーにネコを積んで、ハンドメガホン片手にのんびり歩く姿が、
とにかく最高です。真似したくなる。
次は、本能の赴くままに行動するネコたちの姿。
どうしても映画の中だと、意味を持って存在してしまいがちですが、
この映画では、俳優たちの演技の最中に寝始めたり、顔を洗ったりと、
まさに好き勝手し放題。
そんなネコらしいネコたちの姿にスーッと心が癒されます。
最後は、隣人役を演じる小林克也。
なぜ彼に、おばさん役を充てがおうと思いついたんでしょう。
この映画の空気感を作る上では、おじさんでは違っただろうし、
なんとも絶妙なキャスティングなんです。
嫌なこと言うけど、じつは大事な隣人さん。
とっても、暖かい存在なんです。
あれ、結局いろいろ語ってしまった、、、笑
まあ、でもそんなことぐらいでは、
この映画のリラックス効果は薄まりませんのでご安心ください。
ぜひ、天然植物由来の香り豊かなハーブティーとともに、
癒しの110分間を。
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『レンタネコ』
DVD 5,280円(税込)
発売中
発売元:バップ
©2012 レンタネコ製作委員会
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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