キノ・イグルーの週末シネマ​ no.32
ビッグ・フィッシュ|優しい嘘に救われるみんなが幸せになる映のカバー画像

ビッグ・フィッシュ|優しい嘘に救われるみんなが幸せになる映画

文:キノ・イグルー 有坂塁

ビッグ・フィッシュ|監督:ティム・バートン(2003年・アメリカ)

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2018年01月26日作成



人間は、真実だけで生きられるほど強くない、

とよく思います。

だからこの世の中には、嘘というものがあるのかもしれない、

そう思います。


"嘘で、心のバランスをとる"


もしかしたら無意識に、そうしている部分が

どんな人にもあるのではないでしょうか。


「嘘も方便」ということわざがあります。

人を救うための嘘なら、おおらかに許そうとする、

日本独自の素敵なことば。

イギリスの「white lie」という言葉には、

罪のない嘘、たわいのない嘘という意味があるのだそう。

つまり、みんなが幸せになれる嘘なら罪はないわけです。

もっと大きく考えるならば、

嘘をつくことで誰かの人生を豊かにすることさえもできる。


ぼくはそれを、ティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』から

学ぶことができました。

空想と現実の入り混じった、この不思議な物語から。



「父親とベッド脇で話してくれる、

若き日の冒険譚を信じていた少年。

彼は大人になるにつれ、

荒唐無稽な父親の話を馬鹿馬鹿しいと思うようになり、

ある日喧嘩別れをしてしまいます。

それから3年後、父親が大病に倒れ、

息子は実家に戻ってくることになるのです… 」



魔女に自分の死に方を見せてもらったり、

大男と旅をしたり、

見渡す限り真っ黄色な水仙畑へ行ったり、

サーカスで母親と出会ったり、

戦争に行き大冒険をした挙句、戦死したことになったり…


お父さんの冒険譚は、

イマジネーションにあふれていてワクワクします。

これらのエピソードを、嘘と考えるか、

奇想天外なおとぎ話と捉えるか。


ぼくは、この作品のメッセージがストレートに心にしみ、

涙が止まりませんでした。それは幸せな涙でした。

そして鑑賞後、新宿の街を歩いているときにも、

思い出し泣きをしてしまいました。


この映画の嘘には、悪意が一切ありません。

やさしい嘘です。

誰かのことを本気で思ってついた嘘は、もはや嘘ではない。

みなさんも一度はしたことがあるかもしれない

“サプライズ” は、まさにそういうことなんだと思います。


嘘は想像力。信じれば全てが本当になる。

ぜひあなたも『ビッグ・フィッシュ』から、嘘の真髄たるものを学んでみてください。


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『ビッグ・フィッシュ』
Blu-ray  2,381円(税抜)
DVD 1,410円(税抜)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(C)2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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