深まっていく秋。
だんだんと夜の時間が長くなってきました。
加えて、"秋の夜長"というワードに引っ張られるように、
個人的にはじっくりと味わえる長編映画を選びがちな季節でもあります。
夏は90分。秋は150分。
季節によって映画に求める時間感覚には、
これぐらいの差があって。
冬は120分ぐらいに戻るので、
まだ秋というのは夜の訪れ自体に
ワクワクできている状態なのかもしれません。
フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』を
最初に観たのもこの時期でした。
街のレンタルショップで手に取ったVHSビデオは2本組。
シリーズ三部作、それぞれ3時間前後もある大長編のため、
レンタルショップのある一角は
『ゴッドファーザー』シリーズによって埋め尽くされていました。
この映画史に残る名作、みなさんはご覧になったことがあるでしょうか。
アカデミー賞作品賞を2度も受賞したことがある、まさに偉大なる三部作。
今回はその記念すべき第1作目をご紹介したいと思います。
まずは、内容からご確認ください。
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ニューヨーク。
あるイタリア人一家の長であるドン・ヴィト・コルレオーネは
マフィアのファミリーで絶対的権力を誇り、巨万の富を築いた。
だが対立するファミリーによって彼が狙撃される事件が起きる。
コルレオーネ家のおとなしい三男マイケルだが父親の復讐に立ち上がり、
敵組織のメンバーを射殺。
ほとぼりを冷ます間、イタリアのシシリー島に逃れる。
だがその間にもニューヨークではマフィア・ファミリー同士の抗争が激化する。
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シリーズ1作目にして、アカデミー賞では大本命の最多10部門にノミネート。
結果、メインの作品賞など3部門を受賞し、
それまでの観客動員記録も塗り替える大ヒットを記録。
一気に新時代の扉を開きました。
では、いったいなぜマフィアの世界を描いた作品が、
ここまでの高評価を受けるのか。
まだ観ていないと、ここ気になりますよね。僕もそうでした。
そこでわかったのは、
『ゴッドファーザー』という三部作は、
ズバリ、壮大なファミリードラマであるということ。
(ここで言うファミリーは、家族であり、仲間のことです)
これに尽きると思います。
コルレオーネ一家のファミリーに対する愛情は、
ものすごく深いものがあります。
ファミリーに入るには、血の繋がりがあるか、大きな信頼を勝ち取るか。
信頼の元にファミリーがあって、
信頼を壊す存在はすべて敵とみなし容赦なく打ちのめしてしまいます。
それほどに、白黒がハッキリした世界。
一方、「家族と時間を過ごさない男は、本物の男にはなれない」
というセリフが表すように、実際の家族への強い愛も描いています。
(おまけに、コッポラ自身の両親、祖父、妹、妻、
息子、娘・ソフィアという一族まで総出演!)
血で血を争うマフィアの世界を描きながらも、
大きな意味での"家族愛"が通奏低音のように響いている。
だからこそ、より多くの人たちの心を動かせたわけですね。
暴力や権力を求めたわけではなく、
家族や同族を守りたかったがゆえに、ドンになった男、コルレオーネ。
そんな男を家長としたファミリーの一代記。
三部作合わせると、上映時間は9時間9分にも及びますが、
とにかく内容が濃いので、見始めたら本当にあっという間です。
ぜひ、秋の夜長にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
色褪せない名作とは、このこと!
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『ゴッドファーザー PART I <デジタル・リストア版>』
Blu-ray: 2,075 円 (税込)
DVD: 1,572 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2022年10月の情報です。
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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