日常のなんでもないことに幸せを感じ、
双子のように、互いの心が理解できる。
そんな夫婦像に、憧れを抱いたことはあるでしょうか。
『しあわせのパン』の主人公は、まるでそんなふたりです。
彼らの営むカフェには、ほどよい距離感と、澄んだ空気と、おいしいパンがそろっています。
日々の仕事や家事でおつかれ気味の方は、
ぜひ、映画の世界へショートトリップして、
この素敵な夫婦に癒されてみてはいかがでしょうか?
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東京から北海道の月浦に移り住み、
湖が見渡せる丘の上でパンカフェ「マーニ」を始めた夫婦、りえさんと水縞くん。
水縞くんがパンを焼き、りえさんがそれに合うコーヒーを淹れ、料理をつくる。
そこには、日々いろんなお客さまがやってくる。
北海道から出られない青年トキオ、
なんでも聞こえてしまう地獄耳の硝子作家ヨーコ、口をきかない少女 未久とパパ、
革の大きなトランクを抱えた山高帽の阿部さん、
沖縄旅行をすっぽかされた傷心のカオリ、観察好きの羊のゾーヴァ、
そして、想い出の地に再びやってきた老人とその妻。
それぞれの季節にさまざまな想いを抱いて店を訪れた彼らが見つけた、
心の中の"しあわせ"とは?
そして彼らを見守るりえさんと水縞くんに訪れることとは?
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原田知世さんと大泉洋さん演じる夫婦は、
互いのことを、水縞くん、りえさん、と呼び合います。
この距離感が、とってもいい。
ふたりで生きることを決めながらも、依存することなく、
互いを尊重して、個人として立っている。自立してるんですね。
だからこそ「マーニ」に来るお客さんとも、ほどよい距離を保ちながら、
あたたかく見守ることができるのでしょう。ほんとうに理想的な夫婦です。
この映画には、パンを分け合うシーンが何度も出てきます。
これは"人が人と生きて行くということは、誰かと何かを分け合って生きる"
というメッセージが込められているのだと思います。
水縞くんの好きな言葉「カンパニオ」は、カンパーニュの語源にもなっていて、
「パンを分け合う人々」という意味でもあるのだそう。
ふたりのつつましい人柄が、とってもよく表現された設定だなと思います。
北海道・洞爺湖の美しい四季の風景、
スタイリスト・大森伃佑子さんの衣装、
矢野顕子さん&忌野清志郎さんの主題歌など、
この映画には見どころがたくさんあるうえに、
最終的には、水縞くん&りえさんという素敵な夫婦に、心まで癒されてしまいます。
繰り返しになりますが、おつかれ気味の方は、
早速、この週末に鑑賞してみてはいかがでしょうか?
そしてその際は、お気に入りのカンパーニュと、
かぼちゃのポタージュのご用意を、どうぞお忘れなく。
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『しあわせのパン』
DVD 4,800円(税抜)
発売元:アスミック、オフィスキュー
販売元:アミューズソフト
(C)2011「しあわせのパン」製作委員会
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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