キノ・イグルーの週末シネマ​ no.68
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滝を見にいく|秋風が心地よい季節リフレッシュにでかけよう

文:キノ・イグルー 有坂塁

滝を見にいく|監督:沖田修一(2014年・日本)

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2018年10月05日作成


猛暑のつづいた夏も終わり、いよいよ、秋本番。

お出かけしやすい季節になりました。


ぼくはこの時期になると、いつも『転々』(2007) という映画を思い出します。

オダギリジョーと三浦友和のふたりが、

秋の東京をぶらぶら散歩するだけのロードムービーで、個人的にお気に入りの1本。

今回はこれを紹介しようと思ったのですが、いかんせん舞台が東京なんです。

"リフレッシュ"というワードにイマイチはまらないなぁ…ということで断念。

と同時に、最強すぎる1本を思い出しました!


それが、沖田修一監督作品『滝を見にいく』です。


***


幻の滝を見にいく温泉付き紅葉ツアーに参加した7人のおばちゃんたち。

現地に到着した彼女たちは、頼りないガイドと一緒に、滝を目指して山登りを始める。

木の実を摘んだり、写真を撮ったり、おしゃべりしたり、

それぞれの楽しみ方で山道を進む7人。

ところが、先を見に行ったガイドがいつまでたっても戻らない。

「ねぇ、遅くない?」「迷ってたりして」

気がつけばおばちゃんたちは山の中に取り残されていた!

携帯は圏外。食糧もなければ寝床もない。

突然のサバイバル生活に放り出されたおばちゃんたちは、

果たして人生最大のピンチを乗り切れるのか?


***


登場人物は、ほぼ7人。舞台はバスと山の中だけ。

このシンプルな設定が、とてもいいんです。


設定が複雑な場合は、物語をあっちこっちに広げ、

スケールの大きな作品を作ることができますが、

シンプルにすると、何でもないようなエピソードを紡いでいける分、

人間の魅力を掘り下げることができる。


本作だと、個性的なおばちゃんたちの人間性が、

ジワジワとあぶり出されていくのですが、

その小さなエピソードが、いちいち面白く、

次第に彼女たちに感情移入していくようにできているのです。


そして今回、この映画を最強の1本と思った理由に、ロケーションがあります。

山景色がうっとりとするほど綺麗で、見ているだけで癒されます。

色とりどりの紅葉した葉っぱや、美しい木漏れ日。

余白の多いシンプルな設定だからこそ、

こういった自然の美しさが心に染み渡ってくるのです。


舞台は、新潟県の妙高高原で"幻の滝"も実在するので、

鑑賞後は聖地巡礼したくなること間違いなしです。


その際は、遭難しないようくれぐれもお気をつけください。


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『滝を見にいく』
Blu-ray: ¥2,750(税抜価格¥2,500)
DVD:¥¥2,090(税抜価格¥1,900)
発売・販売:キングレコード
©2014『滝を見にいく』製作員会

映画選定・執筆

有坂塁
キノ・イグルー 
有坂塁
キノ・イグルーは、2003年に有坂塁が渡辺順也とともに設立した移動映画館。
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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