好きな映画話が楽しいのはもちろん、

苦手な映画の話も意外と盛り上がるものです。


数年前に、吉祥寺の喫茶店で開催した座談会「映画とクリームソーダ」では、

苦手な俳優として今をときめくイケメン俳優を上げた方がいらっしゃいました。

理由は…

「顔が内蔵みたいに見えるんです…すみません」

予想だにしない言葉に、会場が湧いたことは言うまでもありません。


サッカー仲間が集まったときには、こんなことも。

「ラブストーリー苦手なんだよね」とひとりが答えると、

「俺も」「俺も」と次々賛同し、

結果、8人中6人がラブストーリーNGでした。

「恋愛は観るモノではない。するものだ。」と。

でも、そんな彼らも『ローマの休日』は別格だと言うんです。

「不思議と何回でも観れるんだよね」とか「夢中になって観たなぁ」とか。


古いモノクロ映画がNGな人も『ローマの休日』だけは好きって言ってたし、

この映画には＂苦手を飛び越える＂何かが隠されているのかもしれません。


ストーリー自体には、特に目新しさはなく、

このようなオーソドックスな内容となっています。


＊＊＊


ヨーロッパ最古の王室の王位継承者・アン王女は、

公務に縛られた毎日にうんざりして、

親善旅行で訪れたローマの宮殿から脱走を図る。

そんな彼女にたまたま出会ったアメリカ人の新聞記者ジョーは、

突如転がり込んだ大スクープのチャンスに俄然興奮。

王女と知らないふりをしてローマのガイド役を買って出た彼は、

市外観光にはしゃぐアンの姿を同僚のカメラマン、

アービングにこっそりと撮影させる。

束の間の自由とスリルを満喫するうちに

アンとジョーの間に強い恋心が芽生えるが…


＊＊＊


至ってシンプルなロマンティック・コメディの本作が、

なぜ、公開から70年近く経った今でも

新鮮な感動を呼び起こすのでしょうか。


ひとつの理由としては、この映画によって、

無名の女優からハリウッドの伝説的スターへと羽ばたいた

オードリー・ヘプバーンの存在があります。


王女役にふさわしい品の良さと、可憐な美しさ。

さらにコケティッシュな魅力までをも併せ持つ、無敵のオードリー。

前髪を短く切って、サイドをカールしたショートカットは

「ヘプバーンカット」として大流行したそうです。


こんな素敵なエピソードも。

当時、映画会社のお偉いさんから

キャサリン・ヘプバーンと混同されるので改名してはどうか…

と打診されたオードリーは、キッパリと

「私をお望みなら、名前も採用してください」と答えたのだとか。

んーーかっこよすぎる！

これをスターの資質というのでしょうね。


そして。

この『ローマの休日』が、多くの人たちの心を掴む最大の要因は、

ただのおとぎ話ではない、という点に尽きると思います。


身分違いの恋というロマンティックな設定に、美しいローマの風景、

笑いが散りばめられたストーリー展開など、

上質なラブコメでありながらも、

本作は、等身大の女性の成長物語にもなっているんですね。


1950年代初頭は、これまでの女性像から脱却をし、

新しい女性に生まれ変わろうとした時代です。

きっと、このアン王女という存在は、

そんな女性たちにとってのロールモデルとなったのだと思います。


またラブストーリーがNGな人に絶賛される理由も、

この＂成長物語＂という視点が大きいのだと思います。

型にハマりたくない、という人には特に。


そんな名作『ローマの休日』に、

オマージュを捧げた作品が『ノッティングヒルの恋人』です。

ぜひ、合わせて観ていただくと、

それぞれの違いが浮き彫りになって楽しいと思うので、

チャレンジしてみてください。

特に、ラストの違いにはご注目を。


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『ローマの休日 デジタル・リマスター版』
Blu-ray <初回生産限定>: 5,280 円 (税込)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2022年5月の情報です。