代々木公園にあるカジュアルイタリアン「LIFE」。
こちらで2年前の秋に、きのこ、栗、さつまいもなど、
秋の食材をふんだんに使ったお料理付きのトークイベントというものを開催しました。
"秋の夜長に観たい映画"というお題のもと、
計10本以上のオススメを紹介したのですが、
来られなかった方のために、ここでも何本か取り上げてみようと思います。
まずは、秋の気配につつまれて何かが終わり、
何かが始まるという愛の物語『セプテンバー』(1987) 、監督はウディ・アレン。
つづけて、1957年秋のコネチカットを舞台にしたメロドラマの傑作『エデンより彼方に』(2002)、
こちらの監督は『キャロル』のトッド・ヘインズです。
他にも、オダギリジョーと三浦友和が共演した秋の東京お散歩ムービー『転々』(2007) や、
パリが舞台のラブストーリー、さらにはリトアニア映画など、
古今東西、さまざまな作品を紹介したのですが、
じつは大事な1本を忘れていたことに、今さらながら気づきました。
それは、メグ・ライアンとビリー・クリスタルが共演した
ロマンティック・コメディを代表する名作『恋人たちの予感』です。
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大学を卒業したばかりのハリーとサリーが初めて出会った時、
"男女間で真の友情は成立しない"というハリーの持論をめぐり議論になる。
2人はその時お互いを"なんてイヤな奴"と思うのだった。
それから5年後、空港で偶然再会したふたりはトゲトゲしい会話を交わしただけで慌しく別れる。
さらにその5年後、2人はマンハッタンの本屋でまたしても偶然に再会。
しかし、今回はそれまでの2人とは違っていた…
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DVDのアートワークにも使用されるほど、印象的な秋のシーン。
こちらは、燃えるような紅葉が美しいNYのセントラルパークです。
出会ってから10年ほどたったハリーとサリーが、
「ああでもないこうでもない」と自分のことを話すのですが、
ともに若い頃にあったトゲのようなものがなくなり、とってもいい感じに。
落ち着いて、互いを尊敬しながら話をする。
その姿が、まるで秋のように穏やかなのです。
きっとロブ・ライナー監督は、
その"ムード"を伝えるために「秋」という季節を選択したのでしょう。
そして、視覚的に秋が伝わるよう、紅葉の美しいセントラルパークをロケ地に選んだ。
公園なら、ふたりが会話をするという設定にも問題がないですし。
よく聞く「映画的」とは、このように映像で語ることのことを言います。
『恋人たちの予感』は、セリフが多いにもかかわらず、
言葉にならない"ムード"までも表現できているからこそ、
30年経ったいまでも、ロマンチック・コメディの名作として
語り継がれているのでしょう。
そしてぜひ、鑑賞した方は
「秋のセントラルパーク」を「夏のサンタモニカビーチ」に置き換えるという
妄想遊びもしてみてください。
同じセリフでも、想いの伝わり方が
ぜーんぜん変わってくることが理解できて楽しいと思うので。
映画作りは、ほんとうに奥が深い。
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『恋人たちの予感<特別編> (ベストヒット・セレクション)』
DVD 1,419円+税
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
© 2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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