いつだって素敵な夫婦と聞くと、我が両親の顔を思い浮かべます。
といっても、母はバツイチのため、
25年前に再婚した父・誠くんとの関係になるのですが。
もともと誠くんは、母の親友にあたる人のお兄さん。
互いに学生時代から存在こそ知ってはいたものの、
当時はまったく心動かず。
しかし30年後に再開したとき、
2人揃ってビビッと来て、すぐに結婚までこぎつけてしまうのだから、
ほんと人生は何が起こるか分かりません。
女手一つで息子3人を育て、40歳超えで再婚した母。
そこからは誠くんの優しさと包容力のおかげで、
目に見えてイキイキとしてきました。
家族で最初にブログを始めたと思えば、
「外国人と話したい!」と英会話も習い始めます。
そして大学時代のバンドまで再結成!
(母はボーカル。ビートルズ、ストーンズ、広末涼子までカバー!笑)
まさに第二の青春。
そして昨年、僕に娘が生まれたため、
新たにおじいちゃん・おばあちゃんという役回りをも
2人で仲良く楽しんでいます。
それもこれも、誠くんの寛大な心あってのこと。
さて今回は、
そんな我が両親に勝るとも劣らない(いや、それ以上に)、
素敵な韓国人老夫婦を描いたドキュメンタリーをご紹介します。
2014年製作の『あなた、その川を渡らないで』。
まずは内容からご確認ください。
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美しい小さな村。
川のほとりで暮らす結婚76年目の98歳のおじいさんと89歳のおばあさん。
おそろいの洋服を着て、手をつなぎ、一緒に出かけてゆく。
いつも笑い声が響き渡る、愛に溢れた生活を送る白髪の恋人。
いまの生活に満足しながらも、日々の気苦労は絶えず、
ふたりは小さな心を痛めている。
妊娠してしまった飼い犬。
ふたりを心配するあまり喧嘩をしてしまう子供たち。
痛みが治まらないおばあさんのひざ。
そして、おじいさんの身体。
雨がしとしとと降る日におばあさんは、
ひどくなってゆくおじいさんの咳を聞きながら、
「天国でも着れるように」と、
たき火におじいさんの洋服を静かにくべるのだった。
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まるで新婚かのように、互いを尊重し合い、愛し合う2人。
ともに大好きで、心から思いやっていることが、言葉以上に、
表情や仕草などを通して、真っ直ぐに伝わってきます。
これが、映像の良さ。
そんな愛おしい2人を四季のうつろいとともに描くという発想が、
とっても素敵で。
春には、山菜を採ってナムルを作ったり、
花を摘んでは互いの髪に飾ったりします。
夏は涼しげなポーチで、昼下がりにお昼寝。
秋は庭の落ち葉を掃除し、
冬になると真っ白になった庭で雪合戦をします。
そして凍りついた手に息を吹きかけては、互いの手を温め合うのです。
いつまでも醒めない夢を見ているような、あたたかい時間。
だからこそ、終わりが見えてくる切なさも同時に感じるのですが、
それこそが、生きるということ。
枯れゆく命と、誕生する命の尊さ。
美しい夫婦愛に号泣必至となる、
おとぎ話みたいな実話となっています。
ハンカチ必須!
マッコリでも飲みながら、お楽しみください。
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『あなた、その川を渡らないで』
DVD発売中
価格:¥4,180 (税込)
発売元:アンプラグド
販売元:ポニーキャニオン
©2014 ARGUS FILM ALL RIGHTS RESERVED.
映画選定・執筆
キノ・イグルー
有坂塁
東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、 無人島などで、世界各国の映画を上映している。
さらに「あなたのために映画をえらびます」という映画カウンセリングや、
目覚めた瞬間に思いついた映画を毎朝インスタグラムに投稿する「ねおきシネマ」など、
大胆かつ自由な発想で映画の楽しさを伝えている。
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